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2023-05-09

売掛金と前受金の違いは?細かな違いと仕訳上のポイントを解説

会計処理を簿記上で行う際に用いる項目として、「売掛金(うりかけきん)」と「前受金(まえうけきん)」があります。

この2つの勘定科目は売り上げが発生した際に使用するものですが、商品・サービスの引き渡しが完遂しているのか、支払いが行われているのか、といった違いに応じて使い分ける必要があります。

そこで、今回の記事では、「売掛金」と「前受金」の違いについて詳しく解説していきます。

これ以外にも、会計処理において間違ってしまわれることの多い、その他の勘定科目との違いについても解説しますので、これを機に勘定科目の理解を深めてみてもらえると幸いです。

「売掛金」と「前受金」の基礎知識

まずは、売掛金と前受金の違いを明確にするために、これら2つの勘定科目の定義について詳しく解説します。

項の最後には、定義を踏まえた上での2つの違いを解説します。

売掛金の定義

売掛金(うりかけきん)とは、商品の販売やサービスの提供など、顧客との通常の営業取引で発生した代金のうち、まだ集金が為されていないものを計上する際に用いる勘定科目です。

具体的な商取引のケースとしては、請負代金の未収分、売却代金の未収分、サービス料の未収分などが該当します。

仕訳における売掛金は、資産の部の流動資産に分類されます。取引先から金銭を支払ってもらう権利(資産)を有しているため、と認識すれば理解しやすいでしょう。

そして、売掛金は上記のような性質のため、取引先から実際に代金の支払いが行われれば、帳簿上にて売掛金は別の勘定科目に振り替えなければなりません。例えば、代金が企業の口座に振り込まれた場合には、売掛金の勘定科目は「当座預金」等に振り替えられます。

また、商取引においては手形などの証書が用いられることがありますが、その場合、「受取手形」という勘定科目が用いられます。

証書と認められる手形と、売掛金が別の勘定科目と扱われることから、売掛金は信用取引の場面において用いられます。そのため、実際に取引によって顧客に商品やサービスなどが引き渡された時点で売掛金の仕訳を行うのが原則となっています。

このような特徴から、売掛金を取り扱うことが多いのは、サービス業、卸売業、製造業となっています。

売掛金の仕訳(商品・サービスの提供が完了した時の仕訳)

商品・サービスの提供を行い、その取引が掛取引であった際の仕訳は以下のようになります(代金は70,000円とします)。

借方 金額 貸方 金額
売掛金 70,000 売上 70,000

売上は貸方、「売掛金」は借方の勘定科目となります。

売掛金の仕訳(取引先より掛取引の代金支払いが完了した時の仕訳)

掛けとしていた代金の支払いが取引先より完遂された際の仕訳は以下のようになります。

借方 金額 貸方 金額
現金・当座預金 70,000 売掛金 70,000

商品・サービスの提供時に借方に計上していた売掛金の消込(貸方に売掛金を計上)を行い、同時に、支払われた方法に応じて「現金」や「当座預金」など勘定科目に振り替えを行います。

前受金の定義

前受金とは、将来的に売上高となるべき金銭を事前に受領した際に用いる勘定科目です。

具体的な商取引のケースとして、商品や材料を顧客に販売する際に代金の一部または全部の商品を納入するよりも以前に受け取るケースが挙げられます。

実際には不動産取引など、高額な商取引を行う場合に前受金の勘定科目が用いられます。高額取引を行う場合、商品の受け渡しに向けた一連の行為が完了した後に支払いがあるとなると、事業者にとってリスクが高く安易に取引を実行することができません。

商品の引き渡し前に一部の代金を受け取っておくことで、その代金を商品受け渡しの行為に充てることもできます。

なお、前受金は金銭を受領しているものの、仕訳における勘定科目は負債と分類されます。金銭の一部を受け取っているとはいえ、商品やサービスなどの引き渡し義務が残っているためです。

そして、商品・サービスの引き渡しが完遂した後、完遂後に支払ってもらう残りの代金を「売上高」として計上するとともに、前受金は売上高へと振り替え処理を行わなければならないことも留意しておきましょう。

前受金の仕訳(代金の一部を受け取った時の仕訳)

商品・サービスの提供にあたって、取引先企業から前受金の支払いが行われた場合の仕訳は以下のようになります(代金総額は70,000円、支払われた前受金額は7,000円とします)。

借方 金額 貸方 金額
現金・当座預金 7,000 前受金 7,000

まずは、「前受金」の支払われた方法に応じた勘定科目を借方に記帳します。「前受金」は貸方の勘定科目になります。

前受金の仕訳(商品・サービスの提供を完了させ、残りの代金の支払いを受けた時の仕訳)

商品・サービスの提供が完了し、残りの代金の支払いも為された際の仕訳は以下の通りです。

借方 金額 貸方 金額
前受金 7,000 売上 70,000
売掛金・現金・当座預金など 63,000

貸方に記帳していた「前受金」の消込作業として借方に「前受金」を計上しましょう。また、残りの代金の支払いに応じた勘定科目を借方に計上します。

そして、それら2つの合算額として貸方に「売上」を計上します。

売掛金と前受金の違い

最後に、売掛金と前受金の違いを整理していきます。

それぞれの勘定科目は以下の表のようにまとめられます。

売掛金 前受金
勘定科目 資産 負債
商品・サービスの提供 完了済 未完了
代金 未回収 (代金の一部も含め)回収済
代金支払い完了後の会計処理 現金や当座預金に振り替える 売上に振り替える

売掛金・前受金と間違われることのある勘定科目

売掛金と前受金の違いについて解説しましたが、勘定科目の名称や勘定科目を用いる際のケースの類似性などから、「仮受金(かりうけきん)」や「預り金」など、誤ってしまう勘定科目が2つ以外にも存在します。

ここでは、そんな勘定科目について詳しい定義や、勘定科目を用いる取引のケースを解説します。

仮受金

仮受金とは、自社の口座に入金されたものの、送金理由や正しい入金額が分からない場合に用いる勘定科目です。賃借対照表上では流動負債に分類されます。

説明から明らかなように、一時利用を前提とした勘定科目であるため、送金理由が判明した場合には正しい勘定科目に振り替えなければいけません。なお、決算日まで入金の理由が判明しなかった場合には「雑収入」として処理します。

預り金

預り金とは、従業員などが支払うべき代金を会社が預かった場合に用いる勘定科目です。例えば、給与から従業員負担分の社会保険料を天引きした場合などに用います。

社会保険料は会社が預かり続けるわけではなく、保険料として会社が支払う金銭となるため、預り金は賃借対照表上、流動負債に計上されます。

立替金

立替金とは、本来、従業員や取引先が支払うべき費用を会社が立て替えた際に用いる勘定科目です。例えば、従業員のセミナー出席費用を会社が立て替えた場合などは、「立替金」勘定科目を用います。

本来、従業員が支払わなければならないものである性質上、後日回収可能な金銭となります。そのため、立替金は賃借対照表上、流動資産に計上されます。

未収入金

未収入金とは、会社の営業活動以外で発生した代金のうち、まだ受け取っていないものに用いる勘定科目になります。

企業が得る利益には、企業目的に即した本業以外にも、有価証券の譲渡益や営業活動以外で利用している建物の賃貸料などもあります。このように、「会社の営業活動以外」の行為で生じた、かつ受け取っていない金銭が「未収入金」に計上されます。

前払金

前払金とは、前受金とは逆に、商品の引き渡しを受けるよりも先に商品代金を支払った場合に使用する勘定科目です。

前受金の定義でも触れましたが、不動産を購入する際など、実務上、手付金を支払うことが一派的であるため、この手付金も帳簿上では前払金として計上されます。

売掛金と前受金の仕訳ミスを防止するポイント

そのため、この2つの仕訳ミスは頻繁に発生することがあります。

そこで、ここでは売掛金と前受金の仕訳ミスを防止するポイントについて解説します。

入金された日付を確認する

売掛金と前受金は、商品・サービスの提供が完了しているのか、代金の支払いが完了しているの、という点で差異があります。そのため、入金日付と売上計上時の伝票日付を照らし合わせることで、どちらの勘定科目で計上しなければいけないのかを判断できます。

上記の方法で仕訳ミスを防止できるのは確かですが、さまざまな企業との商取引が行われていることが一般的であり、帳簿上で売掛金と前受金が混在することは当然のことなのです。

そのような場合、確認業務が煩雑になってしまうため、入金口座を別にしたり、会計ソフトを導入したりといった方法で仕訳ミスを防止することも検討するようにしましょう。

売掛金元帳を確認する

掛取引が行われている企業では、売掛金元帳や得意先元帳などを作成し管理しているケースも多いでしょう。

取引先から入金があった場合には、上記に挙げた元帳や請求書の金額、請求締め日を確認することで、売掛金か前受金かを判断しやすくなるでしょう。

売掛金の管理も、取引先企業の多さに伴って管理が煩雑になるため、会計システムの導入などを検討することが望ましいといえます。

勘定科目を正しく理解して適切な会計処理を

売掛金と前受金の違いについて、定義を交えながら解説してきましたが、いかがでしたか?

2つの計上科目は、売上が生じる取引ケースで用いる共通の勘定科目ですが、代金支払いが完了しているのか、商品・サービスの提供が完遂しているのかといったケースによって使い分けが必要です。

また、上記の性質上「売上」を計上するタイミングも異なっています。

「売掛金」、「前受金」以外にも間違ってしまうことのある勘定科目についても併せて紹介しましたので、ぜひこの記事を参考に適切な会計処理を行ってもらえるようになってくれれば幸いです。