2022-12-12
買掛金が増加するのはなぜ？３つの要因を詳しく解説
掛け取引では、買掛金の増加や減少によって、企業の資金繰りの状態（キャッシュフロー）や経営がうまくいっているのか、うまくいっていないのかをある程度予測することができます。
買掛金が増加したり減少したりするのは、具体的にどのような要因が関係しているのでしょうか。
本記事では、そもそも買掛金はどのようなものなのかについてや、買掛金に類似した勘定科目についての解説、買掛金が増加・減少する要因について詳しく解説します。
買掛金とは何か
そもそも、買掛金とは一体どのような意味をもつ言葉なのでしょうか。以下では、買掛金とは何かについて詳しく解説します。
買掛金とは
買掛金とは、掛け取引によって発生する「後払いの仕入代金」をあらわす勘定科目です。
掛け取引とは、商品やサービスを受け取った際に代金を即時支払わず、一定の期日にまとめて支払う取引で、企業間の信用関係を基盤に成り立っています。
簡単にいうと「ツケ払い」のようなシステムです。
たとえば、企業が取引先から商品を仕入れた際、その場で支払いをせず、月末や翌月末などに一括で支払う場合、この未払いの代金が「買掛金」に該当します。
仕入れ側には支払い義務が、納品側には代金を受け取る権利が発生します。
つまり、買掛金とは、掛け取引で商品を仕入れた企業が負う支払い義務を表すものです。
買掛金と売掛金
掛け取引では、取引であるため、「商品を仕入れる企業」と「商品を納品する企業」が存在します。
仕入れる側に発生する支払義務を買掛金、納品した側が代金を受け取る権利を売掛金といいます。
つまりそれぞれ同じお金を指して、買い手と売り手で呼び方が変わっているということです。
買掛金と類似する勘定科目について解説
次に、買掛金と類似する勘定科目について解説します。
掛け取引の際に使用する勘定科目のひとつとして知られる買掛金ですが、似た意味を持つ勘定科目がいくつか存在しています。
それぞれの勘定科目の意味をあまり詳しく知らないという方は、ぜひチェックしてみてください。
未払金
未払金は、仕入れ以外の営業活動で発生した未払い費用を処理する勘定科目です。
買掛金が商品仕入れに伴う未払いを指すのに対し、何に対する未払いかで区別します。
具体的には、消耗品費や外注費など、販売目的ではない業務上の費用やサービスの未払い分が未払金に該当します。
未払い費用
未払い費用も、買掛金と同じように「あとで支払うお金」を記録する勘定科目です。
ただし、未払い費用は毎月のように継続して発生する費用に使われます。
たとえば、水道代やガス代などの光熱費のように、毎月かかるのに、まだ支払っていない分は未払い費用として処理します。
買掛金が増加する3つの要因
次に、買掛金が増加する要因について解説します。
買掛金は負債の科目となっており、『支払わなければいけない義務』として知られています。
通常、増加することはあまり良くないとされている買掛金ですが、その買掛金が増加してしまう要因は、主に以下のような3つの要因が挙げられます。
取引先が複数ある
買掛金が増える主な原因は、取引先が多く、仕入れが増えすぎることです。
掛け取引では支払いを後回しにできるため、つい発注が増えやすく、複数社から仕入れてしまうこともあります。
その結果、買掛金が膨らみ、支払いが難しくなるリスクがあります。
「後で払えばいい」と安易に発注を続けると、資金繰りが悪化する可能性があるため注意が必要です。
短期間に集中したやり取りをしている
同じ取引先へ短期間に複数回発注すると、買掛金が一気に増えることがあります。
掛け取引では支払時期が重なりやすく、仕入が集中すると支払い負担も同じタイミングで増えるためです。
通常どおりのペースで仕入れていれば大きな問題はありませんが、突発的に発注が増えると資金準備が追いつかず、資金繰りが苦しくなる可能性があります。
予期せぬ買掛金の増加には注意が必要です。
支払いを先延ばしにしている
掛け取引は支払いを後にできるため便利ですが、使い方を誤ると経営を圧迫します。
支払いを遅らせるほど買掛金が増え、資金が準備できなければ支払い不能に陥る恐れがあります。
支払い延期に頼りすぎると資金繰りが悪化するため、無理のない範囲で利用することが重要です。
買掛金を減らす方法
負債の科目である買掛金は、一般的に少ない方が良いとされています。
増加が一時的なものであれば問題はありませんが、それでも買掛金が減少するに越したことはありません。
買掛金が減少するのは、主に以下のような4つの要因が挙げられます。
前倒しで支払う
最も直接的に買掛金を減らす方法です。
資金に余裕があるときは、前倒しで支払いを済ませると、買掛金を減らせます。
また、信用アップや仕入れ値引きの交渉材料になりやすいこともメリットです。
発注量を見直す
買掛金を増やさないためには、残高をしっかり管理し、仕入れを必要最小限に抑えることが重要です。
業績拡大による増加は避けられませんが、無駄な仕入れは防ぎ、買掛金をできるだけ少なく保つ意識が求められます。
取引先を集約する
複数ある取引先を少数に集約すると、支払い条件の交渉力が高まり、サイト延長や値引きが得やすくなります。
また、取引先管理コストが削減されることもメリットです。
買掛金台帳の簡素化も実現しやすいでしょう。
ただし、1社依存は企業にとってのリスクになるため、代替先を確保することもポイントです。
【注意】「業績不振」でも買掛金が減ってしまう
買掛金は少ないほど良いと思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。
商品が売れていなければ仕入れも減り、掛け取引の機会が少なくなるため買掛金も減ります。
つまり、買掛金の減少が売上不振を示している場合もあるということです。
買掛金が減っているからといって、必ずしも良い状態とは言えない点に注意が必要です。
買掛金の回転期間と回転率について解説
次に、買掛金の回転期間と回転率について解説します。
掛け取引において、特に商品を仕入れる側である企業では、たびたび聞くことのある回転期間と回転率ですが、いったいどのような意味を持つのでしょうか。
以下では、それぞれの意味や使い方などを詳しく解説します。
回転期間とは
掛け取引では、支払い義務のある企業が「買掛金回転期間」という指標で管理することがあります。
これは、仕入れから支払いまでに平均して何日かかっているかを示すものです。
回転期間の計算式は以下の通りです。
- 買掛金の回転期間=買掛金残高÷(売上原価÷365日)
回転期間が短いほど支払いが早く、資金繰りの負担は大きくなりやすい傾向があります。
逆に長いほど余裕があると考えられますが、単に支払いを遅らせているだけという可能性もあります。
そのため、回転期間を見る際は、実際の買掛金残高や資金状況と合わせて判断することが重要です。
回転率とは
回転率は、回転期間を逆の計算方法で表した指標で、意味はほぼ同じです。
- 買掛金の回転率=(売上原価÷買掛金残高)×100
回転率が高いほど支払いが早く資金負担が大きい傾向があり、低いほど支払いまでの猶予があり、資金面で余裕があると考えられます。
回転期間と合わせて確認することで、資金繰りや経営状況を把握できます。
まとめ
例外もありますが、基本的には買掛金は多過ぎない方が良しとされています。
支払いを先延ばしにし過ぎてしまったり、余計な発注や取引を重ねてしまったりすると、買掛金は増加してしまうことになります。
逆に、管理体制を徹底することにより無駄な出費を抑えることができるため、買掛金の減少が見込めるのです。
買掛金や売掛金の取引を行う際は、こまめな残高チェックや資金調達が重要になります。
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