2023-05-09
年度をまたぐための仕訳で売掛金のマイナスが発覚!原因とその後の対処法を紹介!
商取引の場面において、商品を販売した場合や、サービスを提供した場合に代金の支払いを求めることができますが、これを掛取引しておくケースは一般的なことであり、この取引によって生じた金銭は会計上、「売掛金」として勘定されます。
また売掛金(売掛債権)と一言にいっても、これの形態は実にさまざまあり、請求書や契約書といった信用取引に基づくもの、手形という形で公的な証書として発行されたもの、電子化され現物としての実体をもたないもの(電子債権)などが挙げられます。
また、日々の商取引や会計上の手続きにおいては、それらの売掛金だけでなく、「帳簿上で記入され管理される売掛金」もあり、年度をまたぐ際の仕訳においては、今後回収予定の売掛金(実際の金銭)と、帳簿上の売掛金の額を一致させなければなりません。
もしも、両者の額が一致せずマイナスが発生してしまった場合には、これまでの会計処理のどこかでミスが生じているということになります。この記事では、そんな売掛金のマイナスが発生した場合の原因と、その後の会計処理の対処法について解説していきます。
記事の後半では、そのような会計ミスを防止するための具体的な管理方法についても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
帳簿上の売掛金がマイナスになってしまう原因と対処法
ここでは実際に回収予定の売掛金と、帳簿上の売掛金がずれてしまう(帳簿上の売掛金がマイナスになってしまう)原因を7つ紹介します。
また、それぞれの原因が生じたことが発覚した場合に、会計上、どのような対処を進めなければいけないのかも併せて解説していきます。
原因1:会計ミス
まずはじめに疑うべきなのが、会計ミスです。会計処理の際の計算や入力のミスが該当します。
もしも売掛金の額がマイナスになってしまっている場合には、通帳の預金残高と帳簿を照らし合わせて計算ミスが起こっていないかを確認しましょう。
特に、差額が数円から数十円の場合には消費税の端数処理を間違えている可能性が高いため、請求書作成時に正しく処理がなされているのかを確認してみるようにしましょう。
そして、このような会計ミスがあった場合には、ずれの分だけ帳簿上で追加の調整を行うようにしましょう。
原因2:売上の計上漏れ
売上を計上する場合、通常は商品の納入、サービスの提供時点で請求書の発行を行い、この旨を帳簿上でも売上として計上処理します。
しかし、企業においては日々さまざまな商取引が行われていることが一般的であり、その度に上記の作業を行うのは大変な手間です。そのため、多くの企業は毎月の売上締日にまとめて請求書の発行を行い、帳簿への売上計上を行うことが主流な方法となっています。
一括で作業を行うことによって効率性を高められますが、このように売上の計上を後回しにすると、やはり帳簿への入力の失念、売上の計上漏れが発生してしまいます。
このように計上漏れがあった場合には、帳簿に記入すべきであった勘定科目をきちんと計上するようにしましょう。なお、計上にあたっての日付は、計上漏れに気付いた日ではなく、本来計上が行われるべきであった日を記入するようにしましょう。
原因3:記帳ミス
売掛金の勘定科目で計上しなければいけないものを、別の勘定科目で計上していたといった仕訳や記帳のミスによっても、売掛金のずれが生じます。
この他にも記帳ミスとして多く見られるのが、貸方と借方を逆にして記載してしまうといったケースが挙げられます。
初歩的なミスであるものの、会計をしたことのある人の誰もが経験してしまうものですので、仕訳処理に誤りが無いか、通帳残高と帳簿を比べてミスや漏れの有無を確認するようにしましょう。
また、このようなミスが発覚した場合には、誤って計上された勘定科目を取り消すよう反対仕訳を実施するとともに、正しい勘定科目として仕訳しなおすようにしましょう。
原因4:他の用途の金銭とまとめて入金されている(回収漏れ)
一般的な商取引の場面において、ある企業に対して1度だけの商取引が行われる、なんてケースはほとんどありません。むしろ連続的に取引が続いていくことがオーソドックスであり、取引ごとに発生する売掛金の支払いが、請求書や取引単位で行われるとは限りません。
企業間取引の場面においては、特定の期間内で発生した取引分の支払いとしてまとめて入金される、資材等のリースの場合には総額に対しての一部のみが入金される、といったケースは頻繁に起きます。要するに、売掛金額と入金額が一時的に一致しない状態が連続することの方が会計上、自然なことなのです。
企業間取引の特性上、常に売掛金額と入金額を一致させるということは難しいため、相手方の企業とどのような商取引を行い、どれだけの売掛金が発生しているのか、それぞれの売掛金の支払期日や支払方法はどうなっているのかを、適宜、適切に管理しておくことが重要となります。
このようなミスが明らかになった場合、多くのケースで売掛金以外の勘定科目で計上しなければいけなかった額を売掛金として計上してしまっていることが大半です。
売掛金ではない額の分だけ反対仕訳を行い、適切な勘定科目に振り返るようにしましょう。
原因5:過入金がある
過入金とは本来よりも多く支払われてしまった金銭のことを意味しており、つまるところ、取引先である相手方の企業の支払い超過のことです。支払いが多く行われたにもかかわらずこの事実に気付かず、帳簿上で支払われる予定通りの額を記載していると、後々の売掛金の額のずれの原因となります。
売掛金の支払い期日が到来した後、取引先企業から支払われた額が請求書に記載された額面よりも多くないか、入金時に計上した帳簿の金額が請求書の金額より多くないかを確認するようにしましょう。
また、過入金があることが明らかになった場合、支払い超過分を返金するか、または次回の取引の際に超過分をもって相殺するか、の2通りの方法で対処することができます。
どちらの方法を行う場合であっても、取引の相手方への確認が必要となりますので、相手方と調整を図って適切な対処を行うようにしましょう。
原因6:前受金がある
売上が計上されていないものの、先んずる形で入金が行われた場合、この額は「前受金」として計上処理をしておかなければいけません。ですが、誤った処理をしてしまうことで、売掛金のずれを及ぼす原因になってしまいます。
会計上の手続きとして、前受金は借方に現金預金、貸方に前受金として仕訳し、売上が発生したタイミングで前受金勘定を反対仕訳で消去します。ですが、これを誤って借方に現金預金、貸方に売掛金といった処理をしてしまうと、売掛金勘定が減ってしまうことになります。
売上を計上するまでに時間を要する場合や決算月をまたぐ場合には、売掛金がマイナスにならないように前受金の勘定科目で処理する必要があります。
誤った処理があった場合には、反対仕訳等で適切な処理を行うようにしましょう。
売掛金の計上ズレを防止するための管理方法
売掛金がマイナスになってしまう原因と対処法について紹介してきましたが、最も理想的な状態は売掛金のマイナスが生じないように原因となる行動を起こさないことです。そのためには日頃の会計における管理体制の見直しが重要となります。
ここでは、売掛金の計上ズレを防止するための管理方法について解説します。
顧客情報を一本化する
顧客情報の管理にあたって取引先の名前を用いるケースは非常に多いかと思いますが、入力間違いによって2社以上の取引先として扱われることがあります。また、部署によって管理する取引先名が異なり、正確な情報を企業内で共有できない、なんてことも。
このような状況を改善すれば全社的に管理体制の一元化を図れるようになり、先に紹介したさまざまなミスを防げるようになるでしょう。
そして具体的な方策として、顧客ごとにIDを割り当て、社内で情報の一元化を図るようにしてみましょう。共通のIDを用いることで取引部署が違った場合等でも、与信管理の手続きをスムーズに進められるといったメリットを得ることができます。
顧客ごとに締日を管理する
掛取引では月末を締日に設定することが一般的となっていますが、企業によっては20日や15日を締日にするケースもあります。
月半ばを締日としている場合、締日以降に取引が発生した場合に翌月の請求で漏れが生じてしまうことがあります。
このようなリスクを低減するために、締日の一括管理を行うのではなく、顧客の締日に応じた管理をするようにしましょう。顧客ごとの管理にしておけば、会計処理における混乱を防ぎやすくなるでしょう。
エクセルや会計ソフト等を適宜活用する
これまで紹介した管理方法を実践するにあたってはエクセルや会計ソフトを活用するようにしましょう。
エクセルであれば関数を組む必要があるものの、自社が必要とする情報をすぐに得るためのシステムを独自に構築することができます。特定のコードを入力すれば、該当する取引先企業の帳簿情報を抽出するといった作業を行うこともでき、売掛金の管理が楽になるでしょう。
エクセルによる管理は会計業務において随分と普及しており、より効率的な会計処理を希望する場合には、会計ソフトの導入を検討してみましょう。近年、注目を集めている会計クラウドシステムの場合、売掛金と入金のマッチング機能を搭載したものもあり、わざわざ確認する手間が省けるとともに、額のずれも迅速に修正できる仕組みが整えられています。
売掛金の管理に留まらず、会計全般の管理を行える会計ソフトの機能を活かしながら、エクセルで補完するといった柔軟な管理体制を築けると良いでしょう。
まとめ
売掛金にマイナスが生じてしまう原因と、その対処法について解説してきましたが、いかがでしたか?
記事の後半では売掛金の適切な管理方法について解説しましたが、杜撰な管理を行っていると、取引先と万が一のトラブルが生じた場合に、問題をさらに大きくする火種になってしまうこともあります。
売掛金がマイナスに生じてしまう原因そのものが起きることのない、適切な管理体制を構築するようにしましょう。