2023-07-10
包括利益って何?意味や使い方をわかりやすく解説!
みなさんは、包括利益という言葉を耳にしたことはありますでしょうか。
包括利益とは、2011年から表示されることが開始された新しい項目で、企業の評価に役立つ数字です。
まだ歴史も浅いため、初めて聞いたという方もいらっしゃると思いますが、世界基準に合わせるために表示が始まったという背景もあるのです。
そこで今回は、包括利益についてあまりよく知らないという方向けに、包括利益の意味や目的、定義などについて、わかりやすく具体的に解説します。
包括利益について興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
包括利益をわかりやすく解説!
はじめに、包括利益の意味についてわかりやすく解説します。
会計処理などをしたことがない方や、仕訳の仕事をはじめてまもない方など、包括利益の意味があまりよくわからないという方はぜひチェックしてみてください。
包括利益とは
包括利益とは、企業の純資産の増分の全てを含んだ利益のことをいいます。
また、包括利益は一言で言えば貸借対照表の期首と期末の差というふうにもあらわすことができます。
包括利益の包括という言葉は、あまり聞きなれない言葉ですが、包み込むというような意味があり、全てを包括的に含む、という意味で包括利益と名付けられたようです。
包括利益という言葉を聞いたことがない方は、全く想像する事もできないと思いますが、包括利益とは企業が扱うお金の種類だということがわかりました。
また、会計基準では包括利益を以下のように定義しています。
- 特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額
包括利益の目的
2011年3月の決算期から、包括利益の表示が始まりました。
以前はなかったものが、なぜ10年ほど前から表示されるようになったのでしょうか。
包括利益を表示する目的は、期中に認識された取引及び経済的事象(資本取引以外)によって生じた純資産を報告させることになります。
どのような項目を当期純利益に含め、どのような項目をその他の包括利益に含めるのか、またどのように計上するのかについては、会計基準のルールに従うことになっています。
また、包括利益の表示をするようになったからといって、当期純利益が必要なくなった、重要ではなくなった、というわけではありません。
あくまで当期純利益、包括利益の両方を表示することで企業をしっかりと評価することができるのです。
包括利益の計算式
包括利益は、以下のような計算式によって求めることが可能です。
- 包括利益=当期純利益+その他の純利益
当期純利益とは、損益計算書で表される利益のことを指していますが、その他の包括利益という点が少し曖昧で、なんだかわからないという方が多くいらっしゃるでしょう。
次の項目では、その他の包括利益には具体的にどんなものが含まれるのかについて解説します。
『その他の包括利益』について詳しく解説
次に、包括利益の計算式に出てくる『その他の包括利益』について詳しく解説します。
包括利益がどのくらいなのかを調べるためには、企業の当期純利益の他に、その他の包括利益という項目を調べる必要があります。
その他の包括利益がどのようなものなのかをしっかりと理解しておかなければ、企業の包括利益がどのくらいの数字なのかを知ることはできません。
以下では、その他の包括利益について詳しく解説しますので、ぜひチェックしてみてください。
その他の包括利益の定義
その他の包括利益とは、会計基準によって以下のように定義されています。
- 包括利益のうち、当期純利益に含まれない部分をいう。その他の包括利益は、包括利益と当期純利益との差額である。連結財務諸表におけるその他の包括利益には、親会社株主に係る部分と非支配株主に係る部分が含まれる。
上記をまとめると、その他の包括利益とは時価で評価される資産や負債などの変動額を表しており、未だ実現していない損益ということとなります。
その他の包括利益の具体的な項目
その他の包括利益の具体的な項目を、以下の表にまとめましたのでご覧ください。
項目 | 説明 |
その他有価証券評価差額金 | 固定資産の投資有価証券に分類されるもの。株式を取得した際の額と、現在の評価額の差額を計上する。 |
保有する土地の含み損益 | 保有している土地の価値を時価で評価し、利益が発生する場合のみ計上する。 |
繰延ヘッジ損益 | 期末時点での先物取引などの評価額の差額を、次の期に繰り延べる場合のみ計上する。 |
退職給付に係る調整額 | 退職金を支給する際に負債として計上されるもの。 |
為替換算調整勘定 | 海外にある子会社が保有している資産を、円に換算した際の差額。 |
表を見ていただければわかる通り、上記は企業間の直接的な取引ではなく、常に変動する株価や土地の価格、金利、為替などの差額を表しています。
包括利益を表示させるメリット
次に、包括利益を表示させることでどのようなメリットが得られるのかについて解説します。
会計基準によると、包括利益を表示させるメリットは以下の3点です。
- 包括利益を表示することで提供される情報は、財務諸表利用者が企業全体の事業活動を検討するのに有益である。
- 貸借対照表との連携(純資産と包括利益とのクリーン・サープラス関係)を明示することで、財務諸表の理解と比較を行うことができる。
- 国際的な会計基準とのコンバージェンスに資する(世界の多様な利益計算のルールを、できるだけ統一して1つに集約できること)
つまり、包括利益を表示させることで、企業の全体像を把握しやすくなり、それは日本国内だけではなく、世界の基準にも合わせていくことになっているということとなります。
2つの包括利益計算書について詳しく解説
次に、包括利益の計算書について詳しく解説します。
包括利益計算書には2種類存在しており、それぞれ書き方が異なります。
以下では、それぞれの特徴をわかりやすく解説しますので、ぜひご覧ください。
1計算書方式
包括利益計算書の1計算書方式は、当期純利益と包括利益を『損益及び包括利益計算書』というシートの1つにまとめて表記する方式のことをいいます。
当期純利益の計算に続けてその他の包括利益の内訳を加減し、損益及び包括利益計算書を作成します。
シートが1枚とシンプルなため、作成しやすいといったメリットがありますが。損益計算書に関しては別途作成が必要となるため、2計算書方式と手間は変わらない結果となり、現状1計算書方式を採用している企業はほとんどありません。
2計算書方式
包括利益計算書の2計算書方式は、当期純利益と包括利益をそれぞれ『損益計算書』『包括利益計算書』というシートの2つに分けて表記する方式のことをいいます。
2計算書方式は、その名のとおり2つのシートを記入しなければならないため、一見1計算書方式よりもめんどくさそうに感じてしまいますが、決算開示義務のある企業では、損益計算書は必ず作成しなければならないルールとなっています。
以上のことから、日本の企業の90%以上はこの2計算書方式を採用しています。
包括利益と当期純利益の違い
次に、包括利益と当期純利益の違いについて詳しく解説します。
資本の捉え方が異なる
そもそも利益とは、それを生み出す元となったものも増加分のことを指しています。
そしてその資本ですが、実は2つの捉え方があるのです。
- ①資本とは、株主資本に限定する
- ②資本とは、返済不要な金額である純資産全体である
上記の資本の捉え方次第で、それに対応する利益の種類が異なります。
①に該当する利益のことを当期純利益と言い、②に該当する利益のことを包括利益と言います。
当期純利益は企業の純粋な儲け
当期純利益とは、税引前当期純利益から、法人税や住民税、事業税などを差し引いた額となります。
上記の結果マイナスとなった場合は、冬季純損失として計上することになります。
全てを差し引き、最終的にプラスとして残ったものが当期純利益となるため、当期純利益は企業が生み出した価値を測る指標であり、純粋に企業が稼いだお金を知ることができるのです。
包括利益は株主や取引などによらない未確定の損益
包括利益は、上記で紹介したとおり、当期純利益からその他の包括利益という項目を差し引いた額になります。
その他の包括利益が含まれることにより、株主からの支出である資本金や、企業の活動によって発生する当期純利益などの未確定の損益の内訳も明確化することができるようになりました。
まとめ
企業の純資産の増分の全てを含んだ利益のことを包括利益といい、今までよりも企業を評価しやすくする目的で2011年3月から表示されるようになりました。
包括利益を表示することにより、企業をしっかりと評価できるようになっただけでなく、世界の基準に合わせることも目的とされています。
未だ実現していない損益である包括利益ですが、そういった意味では売掛金や買掛金と似たような意味を持ちます。
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