2023-07-10
包括利益とは?定義や計算式、当期純利益との違いについてわかりやすく解説

包括利益とは、2011年から日本の連結財務諸表で表示が義務付けられた項目です。企業の評価に役立つ指標の一つですが、まだ歴史も浅いため、初めて聞いた方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、包括利益とは何か、意味や定義についてわかりやすく解説します。当期純利益との違いを知りたいという方も、ぜひ参考にしてみてください。
包括利益とは

包括利益とは、株主との直接取引を除いた、企業の純資産の増減分を表す利益のことです。はじめに、包括利益の概要について解説します。
包括利益とは
包括利益とは、株主との直接取引(増資や配当など)を除いたうえで、貸借対照表の純資産の部における期首と期末の差を指します。会計基準による包括利益の定義は、以下のとおりです。
【包括利益の定義】
「包括利益」とは、ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち、当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分をいう。
引用:包括利益の表示に関する会計基準
包括利益が導入された背景
包括利益は2011年以降、日本の連結財務諸表において表示が義務付けられました。その主な背景には「国際会計基準(IFRS)」との整合性確保があります。
米国会計基準では、1997年に包括利益の表示が定められており、国際会計基準においても同様の考え方が取り入れられるようになりました。グローバル化が進むにつれて、日本でも国際的な会計基準との調和が求められるようになったため、2011年より日本の会計基準にも包括利益が導入されたといわれています。
包括利益の計算式
包括利益は、以下の計算式で求められます。
【包括利益の計算式】
包括利益=当期純利益+その他の包括利益
当期純利益とは、企業の一会計期間における最終的な利益を指します。一方、その他の包括利益とは、現時点では確定していない評価差額などから生じる損益のことです。その他の包括利益については、次章で詳しく解説します。
「その他の包括利益」とは

その他の包括利益とは、当期純利益には含めない、未実現の評価差額などによる損益のことです。以下では、その他の包括利益の定義や具体的な項目をご紹介します。
定義
その他の包括利益は、会計基準によって以下のように定義されています。
【その他の包括利益の定義】
「その他の包括利益」とは、包括利益のうち当期純利益に含まれない部分をいう。連結財務諸表におけるその他の包括利益には、親会社株主に係る部分と非支配株主に係る部分が含まれる。
引用:企業会計基準第25号 包括利益の表示に関する会計基準
上記をまとめると、その他の包括利益は時価で評価される資産や負債などの変動額を表しており、まだ実現していない損益を指します。
具体的な項目
その他の包括利益の主な項目として、以下の4つが挙げられます。
| 項目 | 説明 |
| その他有価証券評価差額金 | 固定資産の投資有価証券に分類されるもの。株式を取得した際の額と、現在の評価額の差額を計上する。 |
| 保有する土地の含み損益 | 保有している土地の価値を時価で評価し、利益が発生する場合のみ計上する。 |
| 繰延ヘッジ損益 | 期末時点での先物取引などの評価額の差額を、次の期に繰り延べる場合のみ計上する。 |
| 退職給付に係る調整額 | 退職金を支給する際に負債として計上されるもの。 |
| 為替換算調整勘定 | 海外にある子会社が保有している資産を、円に換算した際の差額。 |
上記のとおり、その他の包括利益は企業間の直接的な取引に関係なく、常に変動する株価・金利・為替などの差額を表しています。
包括利益を開示するメリット

包括利益の開示には、次のようなメリットがあります。
以下では、各メリットについて簡単に解説します。
経営成績を正確に把握できる
包括利益を開示することで、財務状況を国際的な企業と比較できるようになります。加えて、株価や為替などの市場変動が、財務状況にどの程度影響しているのかも確認できるため、経営成績を正確に把握することが可能です。
財務諸表との連動が明確になる
包括利益は「貸借対照表(B/S)」と直接的に連動しています。貸借対照表との連携を明示することで、財務諸表の理解可能性と比較可能性が高まる点もメリットです。
企業間比較がしやすくなる
現在、日本では連結財務諸表の一つとして、包括利益(包括利益計算書)の開示が義務付けられています。連結財務諸表とは、親会社を中心に、子会社や関連会社も含めたグループ一体の財務諸表のことです。つまり、包括利益を開示すると、企業間の活動や業績の比較がしやすくなります。
包括利益計算書の種類

包括利益計算書は2種類存在し、それぞれ書き方が異なります。以下では、包括利益計算書の種類とそれらの特徴をご紹介します。
<包括利益計算書の種類>
それぞれを具体的に見ていきましょう。
1計算書方式
1計算書方式とは、当期純利益と包括利益を1枚のシート(損益及び包括利益計算書)にまとめて表記する方式のことです。後述する2計算書方式とは異なり、シートが1枚とシンプルなため、作成しやすいというメリットがあります。
ただし、損益計算書に関しては、別途作成しなければなりません。2計算書方式と手間が変わらないこともあり、現在では1計算書方式を採用していない企業がほとんどです。
2計算書方式
2計算書方式とは、当期純利益と包括利益を別々のシート(損益計算書と包括利益計算書)に表記する方式のことです。決算開示義務のある企業は、原則として損益計算書を作成しなければならないため、ほとんどの日本企業が2計算書方式を用いています。
包括利益と財務諸表の関係

包括利益は「貸借対照表(B/S)」や「損益計算書(P/L)」と密接に関連しているため、その点についても理解を深めておくことが大切です。
ここでは、包括利益と財務諸表の関係について解説します。
<包括利益と財務諸表の関係>
それぞれを具体的に見ていきましょう。
貸借対照表(B/S)との関係
包括利益と貸借対照表は「クリーンサープラス関係」によって密接に結びついています。クリーンサープラス関係とは、株主との直接的なやりとりを差し引くと、純資産の増えた分、減った分がそのまま包括利益して表されるという会計の考え方です。
包括利益の導入により、貸借対照表の純資産の部に「その他の包括利益累計額」という勘定科目が新設されました。この科目には「その他有価証券評価差額金」や「為替換算調整勘定」が含まれ、包括利益計算書の「その他の包括利益」と対応する関係にあります。
損益計算書(P/L)との関係
損益計算書(P/L)が確定済みの損益を示すものであるのに対し、包括利益(包括利益計算書)は未確定の損益も含めた総合的な業績を示すものであるといえます。両者とも、貸借対照表(B/S)の純資産の変動につながる要素であり、企業の価値変動を把握するのに役立ちます。
包括利益と当期純利益の違い

包括利益と当期純利益の違いとして、以下の3つが挙げられます。
<包括利益と当期純利益の違い>
それでは、両者の違いを詳しく見ていきましょう。
資本の捉え方が異なる
そもそも利益とは、それを生み出す元となった資本の増加分のことです。そして、この資本には2つの捉え方があります。
【資本の捉え方】
- 資本とは、株主資本に限定する
- 資本とは、返済不要な金額である純資産全体である
上記の資本の捉え方次第で、それに対応する利益の種類が異なります。①に該当する利益のことを「当期純利益」といい、②に該当する利益のことを「包括利益」といいます。
当期純利益は企業の純粋な儲け
当期純利益とは、税引前当期純利益から法人税や住民税、事業税などを差し引いた金額のことです。全収益からすべての費用と税金を差し引くことで算出でき、その金額は企業の純粋な儲けを表します。
一方の包括利益は、上記の金額(当期純利益)にその他の包括利益(含み損益)を加算した指標です。当期純利益とは異なり、包括利益には未確定の損益が含まれるため、企業の価値変動をより包括的に捉えられます。
包括利益は株主や取引などによらない未確定の損益
先述したように、包括利益には株主や取引などによらない未確定の損益が含まれます。当期純利益との違いを一言でいうならば、未確定の損益の有無といえるでしょう。
包括利益に関するよくある質問

最後に、包括利益に関するよくある質問について回答します。
<包括利益に関するよくある質問>
それぞれを具体的に見ていきましょう。
包括利益は当期純利益より重要?
包括利益と当期純利益はそれぞれ異なる特徴を持つ指標であり、その重要性は分析の目的によって変わります。当期純利益は、確定済みの利益をもとに算出される指標で、投資家や金融機関が企業の稼ぐ力を評価する際の判断材料となります。
一方、包括利益は、当期純利益にその他の包括利益(含み損益)を加算した指標です。当期純利益だけでは見えない潜在的な価値やリスクを確認できるため、より精密な企業評価を実現するのに役立ちます。
包括利益がマイナスだと企業評価に影響する?
包括利益がマイナスの場合、企業評価に悪影響を及ぼす可能性があります。なぜなら、包括利益がマイナスの企業は「純資産が減少している」と判断でき、財務体質の悪化などが懸念されるからです。そのため、速やかに原因を分析し、対策を講じる必要があります。
その他包括利益の計算方法は?
その他包括利益は、現時点では確定していない評価差額などから生じる損益のことであり、それに該当するものを合算することで算出できます。具体的には、以下のようなものがその他包括利益に含まれます。
<その他包括利益に含まれるもの>
- その他有価証券評価差額金
- 繰延ヘッジ損益
- 為替換算調整勘定
- 退職給付に係る調整額
包括利益がプラスでも資金が足りないことはある?
包括利益がプラスであっても、資金が不足してしまうことはよくあります。そもそも包括利益は、会計期間中の純資産の変動を示すものであり、手元の現金を示すものではありません。
資金が不足した状態が続くと、企業の存続に関わる重大なリスクが発生するため、早急な対応が求められます。ファクタリングを活用すれば、売掛債権を最短即日で現金化できるため、資金ショートを回避することが可能です。
まとめ
包括利益とは、株主との直接取引を除いた企業の純資産の増減を表す利益のことです。この包括利益を開示することで、経営成績を正確に把握できるようになり、また企業間比較もしやすくなります。包括利益がプラスの場合、その企業は純資産が増加していると判断できますが、利益が出ていても資金が足りなくなることはよくあるので、注意が必要です。
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【監修者】鈴木 孝明(すずき たかあき)
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税理士 [登録番号:142076]/すずき会計事務所 代表
20代で税理士試験に合格後、国内の税理士事務所に勤務。その後、独立し「すずき会計事務所」を開業。
中小企業・個人事業主様を中心に、税務・会計支援を行っており、ファクタリングを含む資金繰り支援に関する実務経験も豊富。 - すずき会計事務所のプロフィール

