2023-07-10
買掛金と支払手形の違いとは?代金の支払いや取引の流れを解説
企業間で物品やサービスの取引をする場合、多額の現金を準備する代わりに支払手形や買掛金を利用して一時的に取引を完了させることがあります。
しかし、手形を発行する場合と、買掛金を用いる場合はお金の流れが似ていて違いがよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで、支払手形と買掛金の厳密な違いや、利用する上でのメリットデメリットについて解説します。
取引先企業との信頼を維持して、安定した経営を続けたい中小企業の方はぜひ参考にしてください。
支払手形とは?
支払手形とは、代金の支払期限、支払う金額を定めた書類のことです。日常的な買い物の場合、現金取引といって物品やサービスの対価に必ず現金を必要とします。
しかし、企業間の商取引では扱う額が大きくなることが一般的です。そのため、現金によるやりとりが好まれません。
そこで手形を発行すると、現金を用いなくても、高額な商取引が可能になります。正確には未払いであっても一時的に売買が完了した状態にすることができるからです。
現金を受け取る側は、支払期日になったら手形を取引銀行に提出し、請求先企業の口座から代金を引き出して受け取ることができる仕組みです。
ちなみに支払手形という名称はお金を払う側の視点に立ったものであり、受け取る側にとっては受取手形という名称で呼ばれます。
支払手形を用いた取引は以下の流れで行われます。
- 物品購入の際に、振出人が支払手形を作成
- 受取人は支払期日になったら取引のある銀行に支払手形を持ち込む
- 振出人の口座から代金が引き落とされる
振出人とは手形の書面を作成する人で、受取人は代金を受け取る権利を有する人に該当します。
支払手形の種類・約束手形と為替手形
支払手形には約束手形と為替手形という2種類の形態があります。約束手形とは、買う側と売る側の二者間でお金のやり取りを行う場合に用いられます。
為替手形は、買う側が作成した手形の代金を第三者としての企業や個人が支払う場合に利用します。代金を支払う対象のことを、名宛人と呼びます。
日本国内の商取引では約束手形を発行する場合がほとんどで、為替手形が利用されることはあまりありません。海外の企業と取引する場合には、より確実に安定してお金のやり取りをするため、及び相手国との通貨レートの変化に柔軟に対応するために、為替手形が多く使われています。
支払手形と小切手の違い
支払手形と小切手は、どちらも銀行口座を通して現金のやり取りをする点が似ています。ですが、小切手は期日に関係なくすぐ現金化が可能な反面、相手の口座の残高が不足しているとお金を引き出すことができません。
支払手形は、支払いの期限以前に現金を引き出すことはできませんが、期日が来れば相手の口座の残高が不足していても取引銀行に対して振り出しを請求することができます。
買掛金とは
買掛金とは、掛取引の際使われる勘定科目のことです。掛取引とは、売買に関わるお金の後払い手続きと思っておけばいいでしょう。掛取引のすべてが買掛金として扱われるのではなく、販売や製造を目的とした仕入れに関わる「仕入れ債務」が買掛金の対象です。
勘定科目は、会計事務において取引の内容を分類するためのタグのようなものです。タグの違いをもとに日々の取引を仕訳する必要があり、年度末の法人税計算や確定申告書作成に利用されます。
買掛金を利用した掛取引では、売る側が商品やサービスを提供し、買う側が支払い期日までに代金を精算することで取引が成立します。この点は支払い手形と同様です。
売買契約をしてから、金銭が支払われない時期が存在するので「信用取引」に該当する金銭のやり取りです。
信用取引とは、「お金を支払ってもらえる」という信頼関係に基づく取引です。会社の業績が悪い、過去に不払いを起こしたことがあるなどで信用を失っている会社は利用しづらくなるので注意が必要です。
買掛金の取引の流れは以下になります。
- 物品やサービスの売買の契約を結ぶ
- その時定めた期日内に、売り手や商品やサービスを提供する
- 買い手は契約の期日内に代金を支払う
買掛金という名称は、支払手形の場合と同様に支払う側の視点に立った言葉で、お金を請求する側から観ると売掛金という表現がなされます。
買掛金と未払金の違い
掛取引では代金が後払いになるため、買掛金を未払金と考えてしまうことがあります。しかし、厳密には未払金と買掛金は異なる勘定科目に分類されています。
買掛金が仕入債務に関わる出費に用いられるのに対し、未払金は固定資産や消耗品など仕入れに関わらない出費が未払い状態であるときに適用される科目となっています。
買掛金と支払手形の違いとは何か
買掛金と支払手形の最も大きな違いは、代金を支払う方法と期日についてです。支払手形の場合、手形を持った受取人が銀行に書類を提出することで、相手口座から現金を引き落とすことができます。
対して買掛金は、買う側が受け取り側の口座に現金を振り込まなければ金額を引き出せません。従って債権者が現金の集金のために企業を訪れることがあります。
また、支払手形の場合必ず契約内容を示す書類が作成されますが、買掛金の場合は書類作成は任意です。よって明確な支払期日が指定されず、一定期間内に行われた掛取引に関わる金額を、所定の日時にまとめて支払う方法が採られています。
こうした性質のため、同じ信用取引であっても手形というはっきりした文書が無い分、買掛金の支払いの方により企業間の信頼関係を重視する傾向が見られます。
支払手形と買掛金のメリットデメリットを比較
支払手形の発行も掛取引における買掛金の設定にも、それぞれメリットとデメリットがあります。
取引に関わるお金のやり取りとして、どんな場合に向いていてどんなときに注意が必要なのかを比較しましょう。
支払手形のメリットとデメリット
支払手形を利用するメリットは、手形=債務履行という解釈が可能なことです。つまり、現金がない状態でも手形を発行することで物品の取引が可能になります。
また、金融機関から融資を受ける借金と異なり利子がつかないこともメリットです。更に、支払期日までにきちんと引き落とされる金額を準備することによって、会社が信頼を得ることにも繋がります。
一方で、支払い期限までに現金が準備できず、不渡りを出してしまうリスクが大きなデメリットです。不渡りを出すと会社の信用に関わり、融資や取引を継続できなくなってしまうからです。
手形発行における収入印紙や、手形の綴りである手形帳を準備するための諸経費が必要になり、長く続けると累積の出費が多くなってしまうこともデメリットです。
買掛金のメリットとデメリット
買掛金のメリットは、一定期間内に行われた掛取引の金額を、一括して支払うので経費の管理がしやすいことです。
また、買掛金は一時的には負債として扱われるため、適正に支払っていくことで企業の信頼度が高まります。この点は支払手形と同じです。
対してデメリットは、掛取引を行う相手が多くなると、期日の管理や金額の管理が煩雑になってしまい、不渡りに繋がりやすいことです。
各取引先ごとに支払いの期日がいつになるのか、支払い時期が重なってしまっても確実に現金を準備することができるのかなどの注意が必要になります。
支払手形と買掛金のメリットデメリットまとめ
メリット | デメリット | |
支払手形 |
|
|
買掛金 |
|
|
代金を受け取る側の注意点
支払手形と買掛金のいずれも、必要な金額が支払われた状態を仮に作り出すという点が同じです。
そのために代金を受け取る側には「厳密にはまだお金を受け取っていない」という状態に陥る点に注意が必要とされます。
中小規模の企業においては、手形の支払い期限までに自社の仕入れや製造に必要な資金が維持できないこともままあるからです。
支払期日以前にどうしても現金が必要となった場合に活用できるのが、ファクタリングです。手形をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、スピーディーな資金調達が可能です。
とはいえ、買い取りを行っている会社によっては、手数料を多く取られて最終的な収入が減ってしまったり、ファクタリングの多用によって取引先からの信頼を損なうリスクがあったりします。
支払手形や買掛金の利用は、多額の現金を必要としない取引として有効です。しかし、現金取引のように確実に利益を得るまで時間が掛かってしまう点に注意しなくてはいけません。
まとめ
仕入れや製造に関わる企業間の商取引では、必要な資金が高額になることがほとんどです。そのため、お互いの会社を行き来しながら大量の現金を持参することは、窃盗や紛失のリスクに加え会社の資金繰りに大きな負担をかけます。
支払手形や買掛金を利用した掛取引を利用することで、一時的には現金を用意できなくても、販売によって収益を得られれば安定して債務を履行し続けることが可能になります。
とはいえ、手形は金銭が支払われなければ意味がなくなるという大きなリスクがあり、代金の受け取り企業としては即座に利益を得られないという点に注意しなくてはいけません。
そこで有益なのがオンライン型ファクタリング提供会社のQuQuMoです。ファクタリング依頼に関わる書類が2種類だけなので手続きが簡単で、手数料も1%からと業界トップ水準のコストパフォーマンスを実現しているからです。
買掛金や支払手形を用いて取引を行う場合のセーフティネットが欲しいと思っている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。