2025-01-10
社会保険料を滞納したらどうなる?社保倒産のリスクと分納の相談📚
明けましておめでとうございます🎍
本年も皆さまに有益な情報コラムを更新していけたらと思います!
何卒よろしくお願い申し上げます。
さて、会社では、従業員に支払う給料から健康保険や厚生年金、雇用保険料や労災保険料といった社会保険料を徴収して、事業主負担分と合わせて支払う義務を負っています。
では、もし社会保険料の納付ができずに滞納したらどうなるのでしょうか。
近年、増えている社保倒産や社会保険料が払えずに困っている際の対策についてご紹介していきます。
■社会保険料の滞納はNG
国民健康保険料や国民年金保険料など個人事業主や一般個人が支払う保険料は、経済的に厳しくて払わない方もいる一方、自分の意思で払わない人もいます。
一方、会社の場合、従業員に代わって健康保険料や厚生年金保険料を払わなくてはいけません。
また、社会保険は従業員の負担分に加えて、事業主が負担する保険料もあります。
健康保険や厚生年金は、国民健康保険や国民年金保険よりも保障内容が充実していますが、それは事業主が保険料をプラスしているからでもあります。
もし会社が滞納すると、従業員が医療機関で健康保険を使えなくなったり、万が一の場合に障害年金や遺族年金を受けられなくなったり、将来の老後の老齢年金も受け取れなくなるおそれがあるため注意が必要です。
また、労災保険料の支払いを怠れば、従業員が業務上や通勤途上で病気やケガをした際に治療費や休業中の保障、亡くなった場合の遺族補償が受けられなくなるおそれもあります。
雇用保険料の支払いを怠れば、従業員をリストラして失業した場合をはじめ、従業員が自ら退職して仕事を探す間も失業給付が受けられなくなるおそれがあるため注意が必要です。
会社の都合だけで滞納すると、従業員が困ることになるので注意しましょう。
■社会保険料の納め方と延滞について
会社は毎月の給料の支払いやボーナスの支払いにあたり、所得額に応じて社会保険料を計算して健康保険料や厚生年金保険料などを徴収し、事業主負担分の保険料と合わせて、年金事務所に納期限までに納めなくてはなりません。
納付期限は納付対象月の翌月末日となります。
たとえば、4月分の保険料は翌月の5月末日までに納めなくてはなりません。
納付方法は、口座振替、金融機関の窓口での納付、インターネットバンキングなどを用いて電子納付する方法があります。
口座振替を選択していれば、口座に残高がある限り、納付漏れにはならないと思いますが、口座に残高が残っていない場合をはじめ、納期限までに窓口に出向かなかった場合や電子納付をせずにいると滞納になります。
滞納すると督促状が届きますが、督促状で指定された期日までに納付ができず、督促状の指定する期日より遅れると、その金額に対して一定割合の延滞金がかかるので注意が必要です。
延滞金の分、支払う負担額も増えるためです。
延滞金の割合は、かつては14.6%と高額でしたが、現在は延滞税特例基準割合が適用されており、令和6年1月1日から令和6年12月31日の期間については、納付期限の翌日から3ヶ月を経過する日までは2.4%、納付期限の翌日から3ヶ月を経過する日の翌日以降は8.7%になっています。
それでも、十分に高い割合なので、延滞すると延滞した社会保険料の支払いに加えて、延滞金の大きな負担も増えてしまいます。
そのため、企業の経営を悪化させないためにも、できる限り、滞納は避けなくてはなりません。
■社会保険料が滞納されるケース
会社は、事業主負担分だけでなく、従業員に代わって払う義務も負っているので、あえて払わないというケースはないと思いたいですが、納付義務があるのに滞納してしまうケースがあるのはどうしてでしょうか。
多くはキャッシュフローの問題で、手元に現金がないケースがあるためです。
儲かっている会社であっても、取引を売掛で行っており、売上が出てすぐに代金を回収できないケースがあります。
一方で、自社は仕入れのために代金を払うことや事務所の賃料や光熱費、車両費やガソリン代などを払い、従業員への給料支払いもしなくてはならないので、資金がショートする場合があります。
となると、事業を運営、継続するために仕入費用やお店の賃料や光熱費、ガソリン代や従業員への給料が優先され、社会保険料は滞納してしまうケースが生じることは少なくないのです。
■社保倒産が増えている
近年、社保倒産する会社が増大するリスクが懸念されています。
社会保険料を支払えずに倒産に至るということです。
社会保険料の支払金額は、従業員の給料の額によっても異なりますが、おおむね厚生年金保険料が給料の総額の18.3%程度、健康保険料はおおむね10%程度となります。
社会保険料は原則として、従業員と事業主が折半で毎月支払う必要があり、従業員の負担分は給料から天引きし、事業主自身の分と合わせて納めなくてはなりません。
従業員分と事業主の負担分を合わせると、給料の総額の30%程度になります。
そのうち、事業主負担分は折半となるので15%ほどです。
社会保険料を払うことで、病気やケガをしたり、障害を負ったり、亡くなったり、老後を安心して過ごすために役立つとはいっても、目先の問題として人件費の負担は重くのしかかります。
法人税などの税金は、売上が低下するなどの事情で利益が出なければ、税金もかからなくなることや利益に応じた額になります。
一方、社会保険料は会社経営が赤字であっても、従業員を雇って給料を払っている限りは納付しなくてはなりません。
会社の売上が低迷しているからといって、従業員をすべて解雇する会社は基本的にありません。
従業員を維持しながら事業を進めて、回復を図る必要があります。
こうしたケースで重くのしかかるのが、逃れられない社会保険料の支払いです。
滞納した場合も、税金の徴収よりも社会保険料の督促のやり方は厳しいとされており、納付ができずに財産などを没収されるなどして倒産に至るリスクもあります。
■納付猶予と差押え
社会保険料を納付することで事業が続けられないといったおそれがある場合、制度上最長で2年間猶予が認められます。
あくまでも猶予であり、納付額を全額免除してもらえるとは限りません。
一部免除の場合、猶予される間も払うべき社会保険料はどんどん上積みされていきます。
猶予を受ける前の滞納した金額は減免されません。
そのため、最終的には滞納した金額と猶予期間中の積み上がった未納分を合わせて納付しなくてはなりません。
社会保険料の納付ができずに滞納している会社は、資金繰りに厳しく、金融機関からの融資なども受けており、返済が厳しくなっているケースも多いです。
金融機関に相談すれば、場合によっては返済を待ってくれ、事業の建て直しのサポートもしてくれることもあります。
ですが、社会保険料の場合、猶予を受けず滞納をしていると、督促を受けてから3ヶ月ほどした時に会社の銀行口座を差し押さえられることがあります
銀行口座を差し押さえられると口座が使えなくなり、仕入先への支払いや賃料や光熱費などの支払いもできなくなるので、信用が失われ、倒産まっしぐらといっても過言ではありません。
サポートしようとしていた金融機関なども、これは大変だと焦って融資の回収に踏み切るようになります。
どんどん資金繰りが苦しくなって追い込まれ、社会保険料の滞納を引き金に起こる社保倒産するリスクがあるのです。
■社会保険料を滞納した際に起こること
滞納している会社への対応は、法制度にもとづき、所轄の各年金事業所で判断のうえで行っています。
一般的な対応として、まずは電話などで連絡が入り、督促されます。
事業が厳しく支払えないなどの事情があれば、原則として最長2年間の猶予を与えることや分割して納める分納を認めてもらえることもあります。
ですが、猶予や分納をしても全額納められる見通しが立たないと判断されると、必要に応じて財産が差し押さえられ、売却されて滞納保険料の納付に充てられてしまうのです。
厳しいと思われるかもしれませんが、金融機関の融資とは異なり、社会保険料は社会制度を担うものなので、性質や立場が異なります。
金融機関の場合、融資にあたって審査を行って自己判断をしているので、まずは建て直しのサポートなどを検討してくれます。
ですが、社会保険料は、現在支払いを行っている健康保険や厚生年金の財源となるとともに、ある会社だけ特別待遇はできず、公平性を保つことが必要です。
社会保険料を払わないと、対象の従業員が健康保険や厚生年金の恩恵を受けられなくなるだけでなく、現在の医療費や厚生年金の支払いは納付された保険料を財源にして行っています。
もし滞納が増えれば、会社を退職した高齢者に年金が払えなくなるなどの問題も発生します。
そのため、どんなに泣きついたとしても、基本的には差押えや財産の売却を待ってはくれません。
ただし、年金事務所によって対応に差はあり、会社の倒産は地域経済にも影響が大きいからと、分納などの柔軟な支払いを認めたり、金融機関が再建支援をしていることなどを条件に待ってくれるケースもあります。
■社会保険料を支払えない場合は相談を
資金繰りの問題などで社会保険料を納期限までに納められない時は、放置せず、督促されるまで待つのではなく、なるべく早い段階で相談をしましょう。
健康保険料と介護保険料、厚生年金保険料については年金事務所、労災保険料や雇用保険料の納付については労働局が相談先です。
支払猶予を受けるか、分納ができないか相談しましょう。
最長2年の支払猶予は一見楽に思えますが、猶予の内容によっては一部免除しか認められません。
少し厳しいと思っても、分納により少しずつでも継続的に払っていったほうが楽な場合もあります。
■納付猶予の条件
納付猶予が認められるには、相談すれば必ず認められるのではなく、一定の条件を満たすことが必要です。
主な条件として、災害や盗難などの事情で財産的な被害を受けた場合、事業を停止または休業した場合、前年の利益の2分の1以上の赤字が生じた場合、これらの事情に類する事態が起きたことで、社会保険料の支払いが一時的に難しくなったことです。
納付猶予の期間は納付期限から1年以内、最長2年までとなっています。
猶予期間中に新たに発生する社会保険料については、全額または一部が免除されます。
■分納について
猶予期間中は延滞金の分納が認められます。
分納を認める条件や分納の期間は実は制度上公開されていません。
各年金事務所が、分納を申請した会社の実態などに合わせて判断しています。
財産状況や収支状況などから個別に判断されることになるので、分納を申請する場合には、現在の収支や財産の情報を記載した財産収支状況書の提出が求められるのが一般的です。
■ファクタリングの活用
仮に分納が認められても、それを払う資金がなければ意味がありません。
手元に現金がなく困った場合に、売掛金があれば、ファクタリングを活用して現金化し、分納資金に充てることも可能です。
ファクタリングは、取引先に対して有している売掛債権を支払期日が来る前にファクタリング事業者に買い取ってもらい、現金化する方法です。
取引先に債権譲渡の通知や承諾を得る三者間ファクタリングと、取引先に知られずに依頼者とファクタリング業者だけで行う二者間ファクタリングがあります。
取引先に知られると資金繰りが悪化しているのがバレそう、社会保険料さえ払えないとわかったら信用を失うと不安な場合には、二者間ファクタリングのほうが安心です。
ファクタリングの利用にあたっては審査があり、ファクタリング業者に手数料を払う必要がありますが、基本的に依頼者の資金繰りが悪化していても利用できる場合が多くなっています。
なぜなら、取引先が支払える状態であれば良いからです。
経営状態が良い取引先をお持ちなら、その売掛金をファクタリングすることで、とりあえず分納資金が得られます。
毎月など定期的に掛け取引をしている優良な取引先があるなら、ファクタリングを活用することを前提に、分納の相談をしてみると良いでしょう。
■まとめ
社会保険料を滞納すると督促が行われます。
督促されても支払えないと延滞金が発生し、滞納を続けていれば、財産の差押えが行われ、財産を売却されて滞納資金に充てられてしまいます。
社保倒産を防ぐためにも、早めに猶予や分納を相談するとともに、資金を準備する手段を考えなくてはなりません。
分納する資金がないという場合に、売掛金があればファクタリングを活用する方法もあります。