2023-07-31
掛け取引の適切な割合とは?管理と売掛金の回収遅れの対策方法も紹介
ビジネスのスタイルが変化している中でも、多くの企業が掛け取引を行っています。一方で、売掛金の回収遅れやその他の問題が発生する可能性もあります。適切な管理を行い、回収が遅れた場合に備えた対策は非常に重要です。
掛け取引の正しい知識を持つことは、企業の信用やビジネスの成長に繋がるでしょう。本コラムでは、掛け取引の重要性やリスクについて詳しく説明し、適切な割合や管理方法、売掛金回収遅れへの対策方法を紹介します。
掛け取引とは
掛け取引とは、会社経営において日常的に発生する取引の一つで、「つけ」で取引を行うことを指します。商品を売買した場合に、商品代金を1か月分まとめて、受け取ったり支払ったりすることです。
掛け取引は、取引相手を信用することで代金をつけておけるわけですので、「信用取引」とも呼ばれます。取引量が多い場合に特に有効で、売上や仕入のたびに代金を決済する手間やコストを削減できます。
しかし、掛け取引は管理が大切な項目でもあります。どの取引先にどのくらいの期間で掛け取引をしていて、どのくらいの金額を受け取ったり支払ったりしなければならないのかを把握することが重要です。
掛け取引における売掛金と買掛金
掛け取引における売掛金と買掛金は、会社経営における重要な要素です。商品やサービスの取引が行われた際の未収金や未払金を指します。
売掛金は商品やサービスを提供した場合、代金をつけておいて後からまとめて受け取るときの未収金を指します。一方、買掛金は商品を買ったりサービスを受けたりした場合、代金をつけておいて後からまとめて支払うときの未払金を指します。
売掛金や買掛金と、未収金や未払金は、本質的には同じです。しかし、会社の経営を行っていく上では、商品の売上や仕入など、基本的な経営活動に関連するものを売掛金や買掛金と呼びます。
リスクを負ってでも掛け取引を行う理由
掛け取引が行われる理由は、半月や一か月ごとにまとめて代金を決済することで、代金回収や代金支払いのコストを削減することができるからです。売上や仕入れごとに代金を決済すると、代金回収や代金支払いの手間やコストが取引が増えると増えてしまいます。
また、同じ取引先との間で売掛金と買掛金がある場合には、差額のみを決済する方法を採ることもできます。資金繰りの観点から見ると、買掛金の支払期日までの間、その分の資金を運用することができます。自社の資金を有効活用することができ、資金繰りの改善につながる場合があります。
長い決済期間によって、資金を柔軟に運用できるため、投資や事業拡大などの資金ニーズに対応することができます。
掛け取引のメリットとデメリット
掛け取引は、商品やサービスの提供と代金の受け取りが時間を置いて行われる取引形態で、特有のメリットとデメリットが存在します。ここでは、その特性について紹介します。
掛け取引のメリット
掛け取引のメリットには、まず取引の手間を大幅に減らすことが挙げられます。現金取引では商品ごとに支払いを行うため、書類の発行や金額の確認などが頻繁に必要となります。
しかし掛け取引では、一定期間の取引をまとめて精算するため手続きが大幅に減少します。企業間の取引がスムーズに行え、業務の効率化に寄与します。
また、掛け取引のもう一つのメリットとして、現金がなくても取引が可能であるという点が挙げられます。商品の仕入れなどで大きな出費が発生する場合でも、支払期日までに資金を準備すれば良いので、資金繰りに一定の余裕を持つことができます。販売側にとっては、掛け取引を行えることで、新たな取引先を開拓しやすくなるという利点もあります。
掛け取引のデメリット
掛け取引のデメリットは、売掛金の管理が必要となることです。取引金額の残高を常に把握しておく必要があり、その管理が煩雑になることがあります。
そして最大のデメリットと言えるのが、信用取引という性質上、貸倒れリスクを孕んでいることです。取引相手が支払いを怠った場合、回収に手間と時間がかかるだけでなく、最悪の場合、売掛金を回収できない可能性もあります。
掛け取引の管理
掛け取引は取引量が多くなってくると、1回の取引ごとに決済をするのは煩雑ですので、掛け取引をすることはコスト削減のためにも便利な方法です。便利な反面、信用にもとづいて回収や支払いを行うわけですので、管理がとても大切になってきます。
ここでは、具体的な管理方法を紹介します。
管理表を作成して支払い状況を把握しておく
掛け取引の管理には、会計ソフトや帳簿を活用し、売掛金や買掛金という勘定科目で処理します。得意先元帳や仕入先元帳を作成し、取引先ごとの明細がわかるようにすることが重要です。
また、売上や仕入、売掛金や買掛金のデータを集計することで、会社が通常の状態の営業循環にそって資金を回収したり支払ったりできているかどうかが分かり、会社全体の分析にも役立てることができます。
売掛金の支払い期間の調整
売掛金の支払い期間を調整することは、資金繰りの面から見ても重要です。買掛金の支払期日まではその分の資金を運用できます。
掛け取引は1か月以内の短期的な決済が多いのですが、売掛金よりも買掛金の決済期間が長ければ、それだけ自社に有利な資金運用ができます。
管理上の注意点
掛け取引を管理する上での注意点として、売掛金や買掛金の取引先ごとの明細から、取引先ごとに回収や支払いの期間、残高がわかるようにすることが重要です。
回収が滞っている場合には、催促をしたり掛け取引の残高が大きくなりすぎてしまわないように管理する必要があります。支払いについてもしっかり管理を行い、確実に支払いを行うようにしていかなければ信用を失ってしまいます。
掛け取引の適切な割合とは
掛け取引の適切な割合は、一概に定めることは難しいです。業種や企業の規模、経営状況などにより大きく変わるからです。一部の業界では、掛け取引が一般的である一方で、他の業界では現金取引が主流となることもあります。
また、掛け取引の割合を増やすことで売上を伸ばすことができますが、資金繰りに影響を及ぼす可能性もあるため、適切なバランスを保つことが重要です。
売上債務権回転期間と掛け取引の関係
売上債務権回転期間とは、売上債務権(掛け売りした金額)が回収されるまでの期間を指します。この期間が長いほど、企業の資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。
掛け取引を行う際には、この売上債務権回転期間を考慮に入れることが重要です。売上債務権回転期間が長いと、資金回収が遅れ、企業のキャッシュフローに影響を及ぼす可能性があります。
福祉や医療はリスクを少なく取引が行える
福祉や医療の業界では、比較的リスクが少なく掛け取引が行えます。福祉や医療のサービスが必要不可欠であり、その需要が安定しているためです。
そのため、掛け取引のリスクが低く、安定した取引が可能となります。ただし、全ての福祉や医療の業界がリスクが低いわけではなく、業界や事業者の特性、経営状況などを考慮する必要があります。
売掛金の回収が遅れた場合の対策
売掛金の回収が遅れると、企業のキャッシュフローに大きな影響を及ぼします。しかし、適切な対策を講じることで、この問題を解決することが可能です。ここでは、売掛金の回収が遅れた場合の対策を3つ紹介します。
契約内容と事実確認
まず最初に行うべきことは、契約内容と事実の確認です。売掛金の回収が遅れている原因を特定するためには、契約内容を詳細に確認し、事実関係を整理することが重要です。
契約書や受注書、納品書などの書類を用いて、商品の納品やサービスの提供が適切に行われたか、また、支払い条件や支払い期限が明確に記載されているかを確認します。
売掛金の時効の確認
売掛金の時効を確認することも重要です。売掛金の時効は、債権者が債務者に対して債権を行使することができる期間を指します。
売掛金の時効が過ぎると、債権は時効により消滅し、法的に回収することができなくなります。売掛金の回収を行う際には、時効の期間を把握し、適切なタイミングで債権を行使することが必要です。
出荷停止や法的手段による回収
出荷停止や法的手段による回収も考慮することがあります。出荷停止は、新たな商品の納品を停止することで、債務者に対する圧力をかけます。一方、法的手段による回収は、裁判所を通じて債権の回収を行う方法で、弁護士費用や裁判費用が発生します。
しかし、コストや時間がかかるため、悪質な相手に対してのみ使用することを推奨します。
まとめ
掛け取引の基本的な概念から、適切な割合、管理方法、遅延した売掛金の回収対策まで、幅広く紹介してきました。
掛け取引はビジネスにおける重要な要素であり、適切な管理と理解が求められます。しかし、企業によって最適な掛け取引の割合や管理方法は異なります。自社の状況に合わせた最適な掛け取引の管理を行うことが重要です。
また、売掛金の回収が遅れた場合の対策としては、契約内容と事実の確認、売掛金の時効の確認、出荷停止や法的手段による回収がありますが、これらはあくまで最終的な手段であり、初めから適切な管理を行うことが最も重要です。
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