2024-12-06
セールアンドリースバックとは?会計処理やメリット・デメリット、利用するケースについて解説

セールアンドリースバックとは、企業が所有する不動産を一度売却し、その後すぐに賃貸の形で借り直す取引手法です。資産を手放してもリースで引き続き使えるため、業務に支障をきたさないといった利点から、新たな信金調達の手段として注目を集めています。
今回はセールアンドリースバックについて、利用することで得られるメリット、デメリットについてご紹介していきたいと思います。今後の資産運用を検討するためにぜひご一読ください。
セールアンドリースバックとは

セールアンドリースバックとは、不動産を第三者に売却し、その後もリース契約を交わして賃料を払い続けることで利用を続けられる画期的なシステムです。
リースバックは、リースバック運営会社とリースバック利用を希望する個人との間で契約を交わします。契約は不動産の売買契約および賃貸借契約の形式を取ります。また、売った物件は資金さえあれば、買い戻しも可能です。
セールアンドリースバックの目的
セールアンドリースバックの主な目的は資金調達、バランスシート改善、事業継続の3つです。資産を売却すれば即時に多額の資金を確保でき、設備投資や借入金の返済などに充てることができます。
また、不動産の売却によりバランスシート上の固定資産が減少することで、自己資本比率の向上や財務健全性のアピールにもつながります。さらにセールアンドリースバックでは工場やオフィス、店舗などをそのまま使い続けられるため、資金調達をしつつ事業の継続が可能です。
不動産担保ローンとの違い
セールアンドリースバックと不動産担保ローンの違いを以下の表にまとめました。
| セールアンドリースバック | 不動産担保ローン | |
|---|---|---|
| 調達資金 | 資産売却により一括で資金化 | 担保価値に応じて融資を受ける |
| 利用目的 | 多目的に活用可能 | 主に運転資金や借換えが目的 |
| 返済義務 | なし | あり |
| 所有権 | 第三者に移転 | 所有権は保持 |
| 貸借対照表への影響 | 資産を売却しバランスシートが軽くなる | 負債として貸借対照表に計上される |
セールアンドリースバックは、不動産売買と賃貸借契約が同時に交わされ、不動産は売却後も自社で利用できます。一方で、不動産担保ローンは不動産を担保にして資金を借りる融資の形態となります。
リースバックは売却のため、所有権は第三者に移りますが、不動産担保ローンの場合、不動産の所有権は変わりません。所有権が変わらない不動産担保ローンでは、融資後もリフォーム費用や固定資産税などの維持費がかかり続けます。
リースバックの場合、売却した分の資金を得て、それ以降は毎月家賃を支払う必要があるのに対し、不動産担保ローンは家賃ではなく毎月のローン返済が伴います。リースバックは売却のため審査は不要ですが、不動産担保ローンは融資のため、審査が必要です。
セールアンドリースバックの会計処理

ここでは、セールアンドリースバックの会計処理方法として、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の2種類の仕訳例をご紹介します。
ファイナンス・リース取引
ファイナンス・リース取引とは、解約不能(ノンキャンセラブル)とフルペイアウトの2つの要件を満たす取引のことです。解約不能とはリース期間中に契約解除ができない取引を指します。フルペイアウトとは、借り手がリース契約の際に支払った資金のほぼ全額をリース料として支払う取引です。
ファイナンス・リース取引では、不動産の売却とリース契約を一体として処理することが一般的です。取得価額3,000万円の不動産を売却し、うち900万円が入金された場合の仕訳例は以下のとおりです。(減価償却累計額は1,800万円とする)
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 普通預金900万円 | 建物3,000万円 |
| 減価償却累計額1,800万円 | |
| 固定資産売却損300万円 |
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 長期前払費用300万円 | 固定資産売却損300万円 |
毎月のリース料が20万円、リース料の割引現在価値を900万円とした場合のリース契約開始時の仕訳例は以下のとおりです。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| リース資産900万円 | リース債務900万円 |
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| リース債務20万円 | 普通預金20万円 |
2回目以降のリース料支払い時では勘定科目「支払利息」を使用します。利息は元本と区分して計上します。
オペレーティング・リース取引
ファイナンス・リース取引に該当しないリース取引のことをオペレーティング・リース取引と呼びます。オペレーティング・リース取引の売却時の処理は、通常の不動産売却と同様です。取得価額3,000万円の不動産を売却し、うち900万円が入金された場合の仕訳例は以下のとおりです。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 普通預金900万円 | 建物3,000万円 |
| 減価償却累計額1,800万円 | |
| 固定資産売却損300万円 |
オペレーティング・リース取引のケースでは、リース料支払いの度に費用として計上する必要があります。リース料15万円の場合の仕訳例は、以下のとおりです。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| リース料15万円 | 普通預金15万円 |
セールアンドリースバックのメリット

セールアンドリースバックのメリットは、以下の3点です。
資金調達ができる
セールアンドリースバックによって不動産を売却すると、まとまった額の資金が調達できます。セールアンドリースバックでは、売却後最短5日程度で資金を得られるため、急ぎで資金が必要なときに便利なシステムです。融資のように審査がなく、買い手を見つける手間もかからないため、セールアンドリースバックは他の方法に比べてスピード感のある資金調達方法と言えます。
不動産を継続して利用できる
セールアンドリースバックでは、売却後も継続して不動産を自社使用できます。一般的な不動産売却では、所有権が移転すると同時に買主に使用権も移ります。オフィスや店舗、工場などの明け渡しを求められると移転や新拠点の確保も必要です。移転には相応のコストや時間がかかり、業務にも影響が出かねません。
セールアンドリースバックでは、同じ不動産を賃貸契約に基づいて継続使用できるため、業務を中断せずに資金を調達できる点は大きなメリットです。
不動産管理の手間を軽減できる
セールアンドリースバックでは所有権が売却先に移転するため、不動産に対する固定資産税や都市計画税の支払い義務がなくなります。そのため、長期的に見て企業のランニングコストの削減が可能になります。
また、建物の老朽化に伴う大規模修繕やリニューアル工事の費用も所有者であるリース会社の負担となるケースが多いです。近年は、地震・台風・集中豪雨などの自然災害リスクが高まっており、不動産の損失リスクも無視できません。しかしリースバックでは、資産を保有せずに事業継続ができるため、資産損失リスクの回避も可能です。
セールアンドリースバックのデメリット

セールアンドリースバックのデメリットは以下の3点です。
売却価格が低くなる可能性がある
セールアンドリースバックでの売却価格は通常の市場売買よりも低くなる場合があります。これは、売却後に賃貸契約を前提とした条件が価格に反映されるためです。
特に不動産が借入の担保として設定されている場合、売却価格が既存のローン残高を下回ると、金融機関が抵当権の抹消を認めない可能性があります。このようなケースでは、金融機関との交渉によって「任意売却」の形で売却する選択肢もあるでしょう。ただし、任意売却が成立した場合でも、借入金の返済義務は残るため、債務返済計画も含めて慎重に検討する必要があります。
リース料を支払う必要がある
一般的に、セールアンドリースバック後の賃料は年間で売却価格の約10%前後が目安とされています。売却価格が高くなるほど、それに比例して賃料負担も増加する傾向があります。そのため、周辺の市場賃料相場と比較すると割高なリース料になる場合もある点には注意が必要です。
セールアンドリースバックによってまとまった資金を調達できたとしても、毎月の賃料が事業収支に影響を与える可能性を考える必要があります。
契約条件によっては中途解約が難しい
セールアンドリースバックは、契約内容によっては中途解約が極めて難しいケースがあります。契約の多くは、中長期にわたる定期借家契約となっており、借主からの一方的な中途解約は原則認められていないことが一般的です。そのため、事業の縮小や移転の必要が生じた場合でも、賃貸契約期間満了までは賃料の支払い義務が継続する可能性があります。
セールアンドリースバックを導入する際は、中長期的な事業計画と照らし合わせて、継続使用の必要性を慎重に判断することが大切です。
リースバックを利用する流れ

セールアンドリースバックを利用する際の主な流れは、以下のとおりです。
- セールアンドリースバックの運営会社と連絡を取る
- 運営会社が自宅を査定する
- 売却価格とセールアンドリースバックの条件が提示される
- 運営会社と売買契約を結ぶ
- 決済をする
- 運営会社と建物賃貸借契約を結ぶ
- 家賃の支払いを始める
将来的に買い戻しを希望する場合は再売買の予約契約をし、定められた期間の後、買い戻しを実施する形となります。買い戻しに関するトラブルを避けるため、あらかじめ条件を明記した契約書を交わすようにしましょう。
セールアンドリースバックを利用するケース

セールアンドリースバックが利用されることの多い主な状況は以下のとおりです。
資金繰りを早期に改善したい
セールアンドリースバックは、不動産を売却することで即時に現金を確保できる方法です。そのため、以下のようなケースで利用されることが多くあります。
- 一時的に運転資金が不足しており、迅速な資金調達が必要な場合
- 新規事業や設備投資にまとまった資金を投入したい場合
- 借入による資金調達ではバランスシートの悪化が懸念される場合
セールアンドリースバックを利用すれば事業を止めずに資金を確保し、キャッシュフローを安定化させられます。
金融機関からの借り入れが難しい
企業が資金調達を行う際、業績不振や債務超過、信用格付けの低下などの理由により金融機関からの融資を受けにくい場合があります。そのような場合、セールアンドリースバックは有力な代替手段です。セールアンドリースバックは借入ではないため信用審査のハードルが比較的低い特徴があります。返済義務も発生しないため、金融機関の融資枠に依存しない柔軟な資金調達方法と言えます。
別の不動産購入・事業投資を検討している
企業が新たな不動産の取得や新規事業への投資を検討している場合、セールアンドリースバックは手元資金を効率的に確保するのに有効な手段です。リース契約によって既存施設は継続して利用できるため、事業の運営に支障をきたすことなく資産の入れ替えが実現できます。また、資産の流動化によってバランスシートの最適化も図れるため、資本効率の向上にもつながります。
セールアンドリースバックは不要資産の売却だけでなく、戦略的な再投資のための資金確保といった積極的な目的にも活用可能です。
まとめ
セールアンドリースバックとは、不動産を第三者に売却し、その後もリース契約を交わして賃料を払い続けることで利用を続けられるシステムです。セールアンドリースバックでは既存の不動産を利用しながらまとまった額の資金が調達できるメリットがある一方で、売却価格が低くなるなどのデメリットも存在します。
不動産以外の資産を売却し、資金調達する方法としては、売掛金を売却するファクタリングという方法も検討できます。
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【監修者】鈴木 孝明(すずき たかあき)
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税理士 [登録番号:142076]/すずき会計事務所 代表
20代で税理士試験に合格後、国内の税理士事務所に勤務。その後、独立し「すずき会計事務所」を開業。
中小企業・個人事業主様を中心に、税務・会計支援を行っており、ファクタリングを含む資金繰り支援に関する実務経験も豊富。 - すずき会計事務所のプロフィール

