2023-07-10
会計でよく聞く振替伝票とは?使い方や役割をわかりやすく解説
企業が行う取引は、大小に関わらずそのすべてを帳簿に記載する(仕訳する)必要があります。
そして、事業規模が大きくなるにつれて日々の企業の取引件数は多くなり、仕訳帳に記載した取引を修正したり、調整したりする場面も増えていきます。
ですが、それらに時間を割きながら新たな取引の仕訳も施さないといけないのは手間ですよね。そんな経理業務における諸問題を解決する手段として用いられているのが伝票制。
この記事では、振替伝票の使い方や役割、具体的な書き方などを、わかりやすく理解できるように解説していきます。
振替伝票とは?
振替伝票とは、銀行振込や振込手数料など現金以外の取引があったときに、その取引を記録するための伝票の一種です。また、伝票は取引内容を一定の様式に従って簡潔に記録した用紙のことを指しています。
冒頭で触れたように一般的な経理業務においては、企業で行われるすべての取引を記録として「仕訳帳」に記載しますが、仕訳帳は原則的に日付順に記載するというルールがあります。
すべての取引が日付順にまとめられているため、それぞれの取引に関して修正や調整があった際に、仕訳帳内に記載をすると時間的な手間が掛かることはもちろん、仕訳帳も煩雑になってしまいます。
このような諸問題を解消するために、取引内容に応じた各種の伝票を作成し、伝票をもとに総勘定元帳へ転記する「伝票制」が取り入れられるようになりました。
振替伝票を起こす具体的なケース
振替伝票は現金以外での取引の際に用いられる伝票です(現金での取引の際には「入金伝票」と「出金伝票」が用いられます)。
近年の取引は、事業の仕入れや売上計上にあたって現金が用いられるケースが減少しつつあります。現金を用いない分、代わりの手段として、銀行口座や小切手、手形などを使用した取引が多くなっています。これに伴い、振替伝票を作成する機会も同様に増えてきています。
現金による取引が行われた際に用いる入金伝票と出金伝票では、借方または貸方のどちらかに現金の勘定科目を使用することが基本となりますが、振替伝票では現金以外の勘定科目を使用します。使用可能な勘定科目が限定されていないため、企業の取引内容に応じて任意で勘定科目を設定できる特徴があるといえます。
伝票制とは?
仕訳帳への記載における諸問題の解消のために利用される伝票制。具体的には、伝票から総勘定元帳へ転記する一連の仕組みのことを表しています。
1つの仕訳帳に日付順に取引内容を記載しなければいけない方法は効率的ではないため、個々で取引内容を記載できる「伝票」を起こし、各種の取引に関して仕訳帳の代わりとして伝票を使用します。
そして、伝票に記載された各種の取引内容を総勘定元帳へと転記する仕組みとすることで業務の効率化を図っています。
具体的な効果として、仕訳帳への記載の場合、取引の発生順にその旨を記載しなければならない原則があるため、経理担当者が担わなければ業務の混乱を招いてしまいます。
一方で、伝票制を採用しておけば、経理担当者以外の人も伝票に取引の記録を残すことが可能となり、経理担当者の業務負担を軽減することが可能となります。
伝票制は3種類ある
伝票制を用いることで経理業務の負担を軽くできるのは確かですが、日々の取引内容や現金の取り扱い状況などは、事業所ごとに大きく異なっているでしょう。この要因には、事業所の規模や業種・業界が関係しています。
このような経営上の背景から、伝票制には用いる伝票の種類に応じた以下3つの区分が設けられています。
- 1伝票制
- 3伝票制
- 5伝票制
それぞれどのような特徴があるのかを把握することで、自社の取引状況に合った伝票制を採用しやすくなるでしょう。
用いられる伝票は5つ
伝票には、これまで紹介したものを含めて以下5種類のものがあります。
- 入金伝票:現金が入ってきたときに作成する伝票
- 出金伝票:現金が出ていったときに作成する伝票
- 売上伝票:商品やサービスなどの売上が発生したときに作成する伝票
- 仕入伝票:商品の仕入れを行った際に作成する伝票
- 振替伝票:現金以外の取引があったときに作成する伝票
これら5つの伝票の中から、事業の取引の様態に応じた伝票(伝票制)を採用し経理処理を行っていきます。
1伝票制
1伝票制とは、「仕訳伝票」と呼ばれる仕訳帳を分割可能な形式にした伝票を用いて仕訳を行い、総勘定元帳へと転記する方法を表しています。
仕訳伝票の形式や記入内容は仕訳帳と何ひとつ変わりませんが、伝票としてバラバラに扱うことができるので、実施取引における仕訳帳への日付順での記載という原則の負担も生じません。
1伝票制の場合、上記の通り、仕訳帳とほぼ同様の形式となっている仕訳伝票を用いるため、記載する取引内容には、現金での取引も含めたすべての取引が該当します。
3伝票制
3伝票制とは、5種類の伝票の中でも、「入金伝票」「出金伝票」「振替伝票」の3種類の伝票を作成し、総勘定元帳へと転記する方法を表しています。
仕訳伝票のみを用いる1伝票制では、現金・現金以外の取引すべてが記載取引となっていますが、3伝票制の場合、現金を扱う取引については入金伝票と出金伝票、現金以外の取引については振替伝票を使用します。
3種類の伝票を用いることで、現金取引と現金以外の取引を容易に区別できるようになります。そのため、現金取引が多い業種において3伝票制を採用する事業者が多い傾向にあります。
5伝票制
5伝票制とは、さきほど紹介した5種類の伝票(入金/出金/振替/仕入/売上)のすべてを作成し、総勘定元帳へと転記する方法を表しています。
現金取引、現金以外での取引に加え、商品の仕入れ(買掛金など)と売上(売掛金など)の状態についても伝票を用いて記帳するため、仕入れが多い小売業、掛け取引の多い卸売業などで採用されるケースが多いようです。
振替伝票に記入すべき事項
振替伝票を用いるケースは、現金以外での取引が行われた場合であり、この取引の様態を仕訳として取り扱う場合、借方・貸方の両方の勘定科目を定める必要があります。
現金取引が行われた場合に用いる入金伝票、出金伝票では、借方・貸方の一方の勘定科目は「現金」で固定となるため、振替伝票と比べて記入すべき事項が少し異なっています。
そのような特徴も踏まえ、振替伝票に記載すべき項目には、以下のものが挙げられます。
- 日付(取引が実施された日付を記載)
- 勘定科目(取引に該当する勘定科目を借方と貸方の双方に記載)
- 金額(取引内容にあった金額を借方と貸方の双方に記載)
- 摘要(取引内容の注釈などを記載)
- 起票者(起票を行った者のサインを記載/押印の場合もある)
入金・出金伝票の形式例
入金伝票の場合は借方が、出金伝票の場合は貸方が「現金」の勘定科目で決定されているため、勘定科目の記載は入金伝票では貸方、出金伝票では借方の勘定科目のみとなります。
振替伝票の形式例
振替伝票の場合には、取引内容に応じて借方・貸方の双方の勘定科目を記載する必要があります。
振替伝票を作成する際の注意点
伝票を用いることで仕訳帳への記載における負担を減らせることは確かですが、伝票を作成する際に経理処理のミスがあっては意味がありません。
伝票を作成する際には、以下に挙げる注意点を念頭に置いておきましょう。
借方と貸方の合計金額は必ず一致する
振替伝票の借方と貸方の合計金額は、必ず一致している必要があります。もしも合計金額が一致していないとなると、総勘定元帳への記載の際に、結局ミスの修正に時間や手間を掛けてしまうことになります。
経理業務をスムーズに行うために、毎回の取引ごとに作成する振替伝票の借方と貸方の合計金額が一致しているか、きちんと確認するようにしましょう。
振替伝票には保存義務がある
振替伝票をはじめとした経理関係に係る書類は、法律上、一定期間の保存義務が課せられています。
そして、これら書類の保存方法については、書類のペーパーレス化が推奨されていることもあり、電子化での保存が認可されています。
電子化保存にあたっては、事前の届け出の提出が必要ですが、書類の保管スペースを確保する負担が減ること、デジタル機器で迅速に経理処理を行えるなど、経理業務の効率化を期待できるので、ぜひ検討してみてください。
法人税法においては7年間
法人税法で規定されている書類に関しては7年間の保存義務があります。そして、振替伝票は法人税法に関連する書類に該当するので、規定された期間、きちんと保管するようにしましょう。
会社法においては10年間
会社法で規定されている書類に関しては10年間の保存義務があります。売上帳や仕入帳、総勘定元帳、仕訳帳などが該当します。
振替伝票の作成方法
振替伝票は手書きで作成することが可能ですが、それだけでなくExcel入力や会計ソフトによる入力などでの作成も可能となっています。
それぞれの作成方法のメリット・デメリットは以下のようにまとめられます。
作成方法 | メリット | デメリット |
手書き | パソコン操作が不慣れな人でも作成可能 | 取引数が増えるごとに集計作業の煩雑性が露骨に現れる |
Excel | データを扱うため管理が行いやすい | データが突然消えたりしないためのバックアップなど、データ取り扱い特注の注意が必要 |
会計ソフト | 必要なデータを直接入力するだけで伝票が作成されるため負担が小さい | 会計ソフトの導入にあたっては使い方を覚える必要がある |
経理状況やスタッフを鑑みて、適切な作成方法を導入してみてください。
まとめ
経理業務の中で用いられる振替伝票について、振替伝票の役割や伝票を用いる会計制度などの点から解説してきましたが、ご理解いただけたでしょうか。
振替伝票をはじめとした伝票を用いることで、仕訳帳に直接記載する際の諸問題を解消することが可能となっています。
しかしながら、それも適切な伝票での経理処理が行えてのことです。伝票の作成にミスがあっては結局、修正のための負担が生じることになるので、作成上の注意点を抑えることはもちろん、ミスを減らすために効果的な作成方法が何であるのかも十分に検討なさってみてください。