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2023-07-10

キャッシュフローと資金繰りの意味を正しく理解してる?それぞれの意味や作成方法・見方を解説

企業経営において頻繁に用いられる用語として「キャッシュフロー」「資金繰り」という言葉があります。

どちらも企業経営における金銭にまつわる言葉だと想像がつくかと思いますが、読者の皆さんはそれぞれの意味をきちんと理解していますか。

同じ意味の言葉として考えられてしまうことの多い「キャッシュフロー」と「資金繰り」ですが、実のところ、その意味合いは異なっています。

この記事では、キャッシュフローと資金繰りの意味を解説し、2つの違い、関連性について触れていきます。

また、経営実践の場ではそれぞれの情報は「キャッシュフロー表」「資金繰り表」として取り扱うことが多いと思いますので、それら各表の作成方法、見方についても解説します。

キャッシュフローの概要

まずは、キャッシュフローの概要についてです。

キャッシュ(cash)とは「金銭」のことを意味し、フロー(flow)は「流れ」を意味しています。つまり、キャッシュフローとは「金銭の流れ」のことを意味するのです。

企業経営を外部向けに公表するものとして決算書が挙げられますが、決算書を見たとしてもキャッシュフローが把握できるわけではありません。

決算書は損益計算書と貸借対照表から構成され、貸借対照表は「資産と借金のバランス」、損益計算書は「企業の儲け」を確認するための財務表です。

貸借対照表はある時点におけるストック(stock:資本など)の状態を示し、損益計算書は種々の金銭の流れがあった上での一時点における損益の状態を示しているため、これらの表からキャッシュフローを読み取ることはできないのです。

そのため、企業経営においては金銭の流れや金銭の増減のバランスを把握するための「キャッシュフロー計算書」の作成が行われています。

資金繰りの概要

次に、資金繰りの概要についてです。

「資金繰り」の言葉は、銀行との融資などを通じた経営シーンにおいて登場する機会が多く、そのため派生的に「金銭をどのように借りるか」と認識している人も多いです。

ですが、資金繰りの意味は上記とは少々異なります。正しい資金繰りの意味は、「金銭の流れを予測し適切な対処を施すこと」です。

実際には、キャッシュフロー(金銭の流れ)はキャッシュインフロー(金銭の流入)、キャッシュアウトフロー(金銭の流出)、キャッシュストック(金銭の蓄積)という3つの要素の複合的な作用によってもたらされるものです。

そして、それら3つの要素を予測し、結果に応じて各種施策の検討が行われるのです。例えば、予測の結果、製品製造のための仕入れ代金が1,000万円ということが明らかになれば、銀行からの融資などを検討する必要がでてくるでしょう。

このように、資金繰りという行為は、予測があってこそ成立するものなのです。借りる行為そのものではなく、「金銭の流れの予測と結果に基づいた適切な対処」という一連のプロセスが「資金繰り」の意味であることを理解しましょう。

キャッシュフローと資金繰りの違い【まとめ】

キャッシュフローと資金繰りの概要について解説してきましたが、2つの用語の違いについて理解できたでしょうか。

ここでは、概要の内容を踏まえて、両者の違いをまとめています。読者の皆さんの理解促進に役立てば幸いです。

相違点 キャッシュフロー 資金繰り
用語の意味 「金銭の流れ」 「金銭の流れを予測し適切な対処を施す(お金をやり繰りする)こと」
行為の実態 お金の流れを分析して会社の財務内容等を精査する行為 将来的なお金の流れを予測し、対処法を検討する行為
分析のためのツール キャッシュフロー計算書 資金繰り表
各表の使用目的 決算の数字に基づいて会社の財務内容等を分析・精査・報告するため 将来の金銭の流入出を予測し、今後の会社の方針・戦略を設計するため

上記のまとめを踏まえて、キャッシュフロー(キャッシュフロー計算書)は「過去の実績の報告書」、資金繰り(資金繰り表)は「企業経営の将来に向けた設計図」と捉えることができるでしょう。

キャッシュフローと資金繰りには相互に関係している部分も!

2つの用語には、先に紹介したように各種の違いがありますが、密接なつながりを有してもいます。

過去の実績を踏まえた現況(キャッシュフロー計算表)と将来の予測(資金繰り表)を組み合わせることで、以下のような相乗効果が見込めるのです。

  • キャッシュフローは、単なる財務分析のツールではなく、予測と実績を比較することで、今後のキャッシュフローの理想形を設計することが可能となる
  • 資金繰りは、単なる将来の予測ツールではなく、予測と実績の比較・分析を行うことで、さらに精度の高い予測を推計することが可能となる

つまりは、キャッシュフローと資金繰りを組み合わせることで、予測・修正・分析・戦略といった企業経営における役立つ武器を増やせるようになるのです。

それぞれの意味や役割、相違点と相乗効果すべてを正しく理解して、企業の健全な維持と成長を果たせるようになってもらえればと思います。

キャッシュフロー計算書の作成方法

キャッシュフロー計算書を作成する場合、連続する2期を比較しながら、以下の手順で進めましょう。

  1. 前期と今期の決算書の準備をする
  2. 2期分の貸借対照表を並べる
  3. 貸借対照表内の各勘定科目がいくら変動しているのか計算する
  4. 計算した結果に基づき、キャッシュフローに換算する
  5. キャッシュフロー計算書の勘定科目に落とし込んでいく

キャッシュフロー計算書は1年間の現金の流れを「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つの観点から算出します。

営業活動によるキャッシュフローと勘定科目

営業活動によるキャッシュフローは、商品の売上や原材料の仕入れなど、本業の営業活動の結果、どのくらい収益が得られたか、または支出が生じたのかを表します。

この項目がプラスであれば、事業から資金が生み出されており、マイナスならば、資金が行き詰っていると考えられます。

営業活動によるキャッシュフローに関する勘定科目は以下の表のとおりです。

プラス項目 マイナス項目
減価償却費
棚卸資産の減少 棚卸資産の増加(※在庫増加にあたって現金の流出が起こっているためマイナス項目となる)
売上債権の減少 売上債権の増加(※売上債権は現金化されていない状態であるためマイナス項目となる)
仕入債務の増加(※現金として支払いが完了していない仕入債務はプラス項目となる) 仕入債務の減少

投資活動によるキャッシュフローと勘定科目

投資活動によるキャッシュフローは、機械や車両といった固定資産の購入や売却など、本業を行うために投資をどのくらい行ったかを表します。

この項目がプラスであれば、固定資産の売却が多く、マイナスであれば、固定資産の購入が多く行われていると考えられます。

投資活動によるキャッシュフローに関する勘定科目は以下の表のとおりです。

プラス項目 マイナス項目
固定資産の減少(※固定資産の売却により現金が増えるためプラスの項目となる) 固定資産の増加
有価証券の減少(※有価証券の売却により現金が増えるためプラスの項目となる) 有価証券の増加

財務活動によるキャッシュフローと勘定科目

財務活動によるキャッシュフローは、借り入れや株式の発行などで資金調達をどのくらい行ったかを表しています。

この項目がプラスであれば、金融機関からの借り入れや新たな出資などを受けたことを、マイナスであれば、借入金の返済を行っていると考えられます。

財務活動によるキャッシュフローに関する勘定科目は以下の表のとおりです。

プラス項目 マイナス項目
借入金の増加(※借入金の増加は現金の増加であるためプラスの項目となる) 借入金の減少
社債の発行(※社債の発行によって現金が増えるためプラスの項目となる) 社債の償還

資金繰り表の作成方法

資金繰り表の作成にあたり、以下の書類を準備しましょう。

  • 月次残高試算表(月次推移試算表)
  • 手形帳
  • 現金出納帳
  • 預金出納帳(預金通帳)
  • 借入金返済明細表(※借入金がある場合)
  • 設備投資予算/将来の販売計画・人員計画

必要な書類がない場合には、普段の取引状況を頼りに作成すると良いでしょう。ただし、不正確な情報に基づいた資金繰り表の作成は、資金ショートを起こす危険性を上げてしまいます。

必要書類の用意が難しい場合、資金繰り表作成に用いる各種の数値は厳密に見積もって作成するようにしましょう。

必要書類の用意ができたら、以下の手順で資金繰り表を作成していきましょう。

  1. 資金繰り表のフォーマットを作成する
  2. 事前に用意した資料を基にフォーマットに必要事項を記入する
  3. 2.の数値から将来の売上や仕入予測を立てる
  4. 3.の数値もテンプレートに反映する

資金繰り表のフォーマットは自作も可能ですが、インターネット上にてテンプレートが数多く公表されています。

資金繰り表は企業経営の将来予測に役立てるものですが、特段、記載すべき期間が決まっているわけではありません。一般的には、基準とする月にプラスして2~3か月ほどで作成するケースが多いようです。

ただし、期間が先に延びるほど資金繰り表の不確実性は高まっていくため、一定の期間で区切りをつけるようにしましょう。

まとめ

企業経営において頻繁に用いられる「キャッシュフロー」と「資金繰り」について、その概要と2つの違い、2つを組み合わせることによる相乗効果の観点から解説しましたが、ご理解いただけたでしょうか。

キャッシュフローは企業のこれまでの実績を把握するために、資金繰りは今後の企業経営の計画を的確に設計するために、大切な作業となります。

2つの用語が似たものだと勘違いしていた読者の方もいたかと思いますが、今回の記事で2つの違いとそれぞれの重要性について理解を深めてもらえていれば幸いです。

また、情報を的確に扱うためには、キャッシュフロー計算書と資金繰り表をきちんと作成できることも必要条件となります。作成の際には、ぜひこの記事を役立ててみてください。