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2024-09-27

ファクタリングの売掛先に通知は必要?🤔

ファクタリングは、売掛債権をファクタリング業者に債権譲渡して、売掛債権の支払期日が来る前に資金調達できる仕組みです。
ファクタリングの売掛先に通知は必要なのか、その可否と通知によるメリットやデメリットを見ていきましょう。

■ファクタリングの仕組み

ファクタリングは、掛け取引の売掛債権をファクタリング業者に買い取ってもらうことで、売掛債権の支払期日前に現金化をし、信金調達ができる仕組みです。
ファクタリング業者は手数料を控除のうえ、ファクタリング利用者に支払いを行います。
銀行融資のような厳しい審査もなく、スピーディーに資金調達できるのがメリットです。
このファクタリングには大きく分けて2つの方法があります。
二者間ファクタリングと、三者間ファクタリングです。
それぞれの特徴をまず確認していきましょう。

■二者間ファクタリングとは

二者間ファクタリングは、売掛債権を買い取ってもらいたい債権者とファクタリング業者の2者だけで契約を行い、資金化する方法です。
売掛先は無関係で、売掛先に通知されることはありません。
手数料を控除したうえで資金が得られ、実際に売掛債権の支払期日が来た時には、売掛先から普通に代金を受け取ります。
受け取った代金をファクタリング業者に送金すれば、取引は完了します。
売掛先に知られることなく取引が完了する仕組みです。
売掛先にファクタリングの事実は知られたくない時やスピーディーに現金化したい時におすすすめです。
二者だけで契約ができるので、手間がかからず、資金調達までの時間の短縮ができます。

■三者間ファクタリングとは

三者間ファクタリングは、債権者と売掛先、ファクタリング業者の三者間で行う手続きです。
売掛先に通知するか、承諾を得る方法や三者で契約手続きを取る方法です。
売掛先の理解を得たうえでファクタリングができますが、三者で手続きを行う必要があるため、二者間ファクタリングに比べると時間がかかります。
資金調達をした後は、売掛債権の支払期日がきたら、ファクタリング業者が直接売掛先から代金を回収するので、支払いを受けてファクタリング業者に送金する手間はかかりません。

■売掛先に通知するメリット

では、三者間ファクタリングを利用し、売掛先に通知するメリットはどんな点にあるでしょうか。
売掛先に売掛債権の譲渡を通知するメリットを確認していきましょう。

・後からのトラブルを防げる

二者間ファクタリングは基本的に売掛先にバレる心配はありません。
ただし、なんらかの事情で、売掛先が売掛債権を譲渡されていることに気付いた際やなんらかの噂で知ってしまった際、信頼を失うなどのリスクがあります。
事前に通知して理解を得ておけば、後日のトラブルを防ぐことが可能です。

・手数料が安い場合が多い

二者間ファクタリングと三者間ファクタリングでは、手数料率に差があることが少なくありません。
二者間ファクタリングの場合、支払期日が到来したら、利用者が売掛先から代金を受け取ったうえで、ファクタリング業者に送金することになります。
そのため、支払期日到来時に利用者が万が一倒産していると、ファクタリング業者は代金の回収ができなくなります。
一方、三者間ファクタリングであれば、利用者が倒産しても、売掛先から直接代金回収をすることが可能です。
利用者のみの信用に依存せず、売掛先の信用力を担保することができます。
特に売掛先の経営状態が良好であるなど、優良な売掛先の場合、手数料率が下がるケースが多いです。
手数料率が下がれば、その分多くの現金を手に入れることができるので、利用者にとってもメリットが大きくなります。

・審査に通りやすい

ファクタリングは、利用者の資金繰りが悪化していても、売掛先の信用力が高く、支払能力が高ければ審査に通り、二者間ファクタリングを利用することは可能です。
もっとも、二者間ファクタリングは、支払期日が到来したら、利用者が売掛先から代金を受け取ったうえでファクタリング業者に送金する必要があるので、その時点で利用者が倒産していると、ファクタリング業者は代金回収が困難になります。
一方、三者間ファクタリングであれば、直接売掛先からファクタリング業者が代金回収できます。
売掛先の信用力が高ければ、より審査に通りやすく、審査の時間がスピーディーになることがメリットです。

・ファクタリング業者に任せられる

売掛先に通知してファクタリングを行うと、その後の代金回収はファクタリング業者と売掛先に任せることができます。
二者間のように支払期日が到来するのを待って、売掛金の支払いを受け、ファクタリング業者に送金する手間が省けます。
その売掛関係から解放されるのがメリットです。

■売掛先に通知するデメリット

では、売掛先に通知するデメリットはどんな点があるでしょうか。
デメリットについて見ていきましょう。

・拒否される場合がある

売掛先にとっては、債権譲渡されて、債権者が馴染みの取引先から、初めて知るファクタリング業者に代わるわけなので不安が生じます。
いかに信頼あるファクタリング業者であったとしても、知名度の高い銀行などと異なり、大丈夫なのかと心配するケースも多いです。
もし、売掛金を払えなくなったら、厳しく督促されるのではないかと不安を感じて、三者間ファクタリングを持ちかけても拒否される場合があります。
拒否されたから二者間でとなると、売掛先にも気付かれてしまっている状態となり、二度手間になりかねません。

・ファクタリングに時間がかかる

二者間ファクタリングならファクタリング業者と利用者のみで契約ができますが、三者間ファクタリングになると売掛先も絡んできます。
通知のために内容証明郵便を送るなど、手続きが必要となり、受領してもらうまで数日程度の日数がかかることになります。
すぐに資金調達したいというニーズがある時には、時間がかかる分不便です。
資金繰りに困っている時やすぐに支払ってビジネスチャンスを掴みたいと考えている時には、時間がかかるのが大きなデメリットになります。

・信用度が下がるリスク

ファクタリングをすることを通知することで、売掛先は取引先が資金繰りに困っているのではと不安を持ちます。
倒産するかもしれないなどと思われ、信用度が下がるのがデメリットです。
ほかの取引先などにも噂されてしまうリスクもあり、ほかの取引先からも不安がられる場合があるので注意が必要です。
通知するにあたっては、資金の用途を説明するなど、資金繰りが悪化したことや経営状態が悪いわけではないことを説明したほうがいいかもしれません。

・取引を停止されるリスク

ファクタリングを通知することで、資金繰りの悪化や経営状態が悪いと不安がられた結果、取引を停止されるリスクもあるので注意が必要です。
特に大口の取引先であると売上が減少し、その後の経営にも影響を与えます。
ファクタリングを売掛先に通知することは、こうしたリスクもあることに注意しましょう。
ただし、法制度上、債権譲渡を理由に特段の不利益がないにもかかわらず、取引停止などの行為を行うことは権力濫用となることがあります。
といっても、取引先を訴えるなどのことはしにくいと思うので、無用なトラブルを避けたいなら、通知はしないほうが良いかもしれません。

■債権譲渡の通知の方法

売掛先に通知する場合の方法について見ていきましょう。
債権の譲渡の通知は、トラブルを避けるために内容証明郵便を使って行うのが一般的です。
また、債権譲渡を第三者に対抗するためには、確定日付のある証書でなくてはならず、内容証明郵便による通知が利用されています。
三者間ファクタリングを利用する場合に、ファクタリング業者から求められれば、確定日付ある内容証明郵便で通知を行いましょう。
確定日付ある通知といった要件は、民法で定められているルールです。
ですが、近年、この古いルールを改正する動きがあり、中小企業や下請業者など弱い立場にある事業者が、売掛債権を使ってより柔軟かつ迅速に資金調達ができるようにと、法制度の改正や新たなルールを設ける動きが出てきました。
債権譲渡の通知を内容証明郵便で行う代わりに、システムを使って行えるという方法が生まれています。
これは2021年8月2日に施行された特例です。
産業競争力強化法にもとづく新事業活動計画の認定を受けた事業者によって提供される情報システムを利用して債権の譲渡の通知をした場合、確定日付のある証書による通知とみなすというものです。
ただし、そのための情報システムは、以下の要件を満たすものでなければいけません。
まず、債権譲渡通知などがされた日時と内容を簡単に確認できることが必要です。
そして、日時と内容の記録が保存され、改変防止のための措置が講じられていなくてはなりません。

■譲渡制限特約が付いていた場合

売掛先に通知するということは、債権譲渡することが売掛先に知られることになります。
通知した際に拒否されるリスクもありますが、それ以前に売掛債権に譲渡制限特約が付いているケースも少なくありません。
債権者が変わって、代金回収が厳しくなることや無用なトラブルに巻き込まれることを防ぐため、売掛取引を始める際に契約で、譲渡制限特約を結ぶ場合があります。
この場合、売掛先に通知したところで、特約違反だと言われ、取引を解除される場合や契約上に定めた違約金などのペナルティを課せられる場合もあるので注意しましょう。
もっとも、だからといって二者間ファクタリングで通知せずに勝手に行うと、さらに特約違反で不利益を課せられるおそれがあります。
こうしたトラブルを防ぎ、中小企業や下請業者などが円滑に売掛債権を使った資金調達ができるための仕組みも構築されました。
債権法改正により、2020年4月1日からは、より、資金調達が円滑にできるようになりました。
譲渡制限特約を含めた、民法の債権部分のルールが大幅に見直されたのです。
まず、譲渡制限特約が付されている債権をファクタリング業者に譲渡したとしても、債権譲渡は原則有効になります。
その代わりとして、売掛先が希望している弁済の相手方を固定したいという利益を保護するために、元の債権者に対して弁済や供託を求めることができるようになりました。
ただし、売掛先が求めた場合、供託などをしなくてはいけないので、資金がないとできないおそれはあります。
譲渡制限特約付き債権をファクタリング業者に譲渡してしまった場合に、それは法制度上は有効になったとしても、売掛先からペナルティを課せられたり、取引を停止されるのではという不安はあると思います。
特約違反をしたばかりに、その後の継続取引がすべてストップされるとなれば、企業にとっては大きな損失であり、経営を圧迫しかねません。
そこで、改正法では、資金調達目的での債権譲渡をしても、契約の解除や損害賠償の原因とはならないこととしています。
また、債権譲渡がなされても特段の不利益はないにもかかわらず、取引の打ち切りや解除を行うことは合理性に乏しく、権利濫用などにあたり得るという方針も法務省から打ち出されています。
現在では、売掛先や元請事業者などの企業に対して、契約時に次のような点を明確に盛り込むようにアナウンスもなされているのです。
まず、譲渡制限特約を締結する場合であっても、金融機関などに対する資金調達目的での債権譲渡を禁じない内容にすること、そして譲渡制限特約が付された債権を資金調達目的で譲渡したとしても、契約の解除や取引停止、損害賠償の原因とはならないため、下請事業者に対して不当に契約の解除や取引停止、損害賠償請求などを行うことがないよう求めています。
こうした法改正もあるので、譲渡制限特約が付されている売掛債権でも、ファクタリングの活用ができることは覚えておきましょう。

■まとめ

ファクタリングを売掛先に通知することで、審査に通りやすく、手数料率も下がり、代金回収をファクタリング業者に任せられるなどのメリットがあります。
一方、通知をしなければ、売掛先にファクタリングの事実や資金繰りが悪化しているといった事情を知られずに済みます。
通知をすることで売掛先からの信用を失い、取引を停止されるリスクもあるので注意が必要です。
また、通知の手続きや三者間での手続きが必要となることで、二者間ファクタリングより資金調達にかかる時間がかかるため、すぐに資金を得たい時には注意しましょう。