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2022-09-21

ファクタリングの請求書を偽造するとどうなる?事の重大さを理解して健全なファクタリング利用を!

企業の資金調達手段は銀行融資などが一般的でしたが、近年は融資に代わる新たな取り組みとして、”債権活用”も普及するようになり、”ファクタリング”を利用する企業が増加しています。

融資と変わらずファクタリングにおいても、手続きを進めるにあたって、各種の書類を用意しなければいけませんが、この記事をご覧になっている方の中には、「ファクタリング業者に偽造書類を提出するとどうなるのだろう?」と思っている経営者もいるのではないでしょうか?

ファクタリングを利用するに至る背景には、早急な資金調達が必要となっている、ということもあります。そしてそのように、どうしても資金調達を受けたいとなると、審査に通るために”書類の偽造”をしてしまおうと考えてしまう経営者も少なくありません。

結論として、書類の偽造は犯罪になるので、絶対に行ってはなりません。

今回は、ファクタリングの手続きにおいて請求書を偽造してしまうと、どのような犯罪が成立するのかを詳しく解説していきます。事の重大さを理解して、健全なファクタリング利用に努めるようにしてください。

ファクタリング手続きで求められる書類とは?

ファクタリングを申し込む際には、以下に挙げる書類が必要となります。融資の場合と変わりなく、提出資料に基づいて審査が行われるため、不足している書類があったり、記載漏れがあったりといった、不備があると資金調達できない可能性があります

  • 請求書・見積書
  • 基本契約書・売買契約書
  • 預金通帳の写し
  • 決算報告書
  • 商業登記簿謄本
  • 申込代表者の身分証明書
  • 印鑑証明書

それぞれの書類の概要をお伝えしていきます。

請求書・見積書

ファクタリング業者に譲渡するための売掛債権が、きちんとあるかを確認するために、売掛先企業発行、ファクタリング利用企業宛ての請求書や見積書が必要となります。

基本契約書・売買契約書

売掛債権として効力を発揮する書類が、先に説明した請求書や見積書にあたりますが、これらの書類に代わって、取引先企業との基本契約書や売買契約書、建築請負契約書など、取引を証明できる書類の提出を求められるケースもあります。

預金通帳の写し

ファクタリング業者に譲渡予定の売掛債権の回収可能性、いうならば売掛先企業の信用力を確認することを兼ねて、取引先企業との間でこれまでにどれくらいの頻度でどの程度の金額の取引をしてきたのかを明らかにできる、預金通帳のコピーを提出する必要があります。

取引先企業との付き合いが長いこと、支払いを受けられる可能性が高いことを示せれば、審査も通過しやすくなります。

決算報告書

ファクタリング利用企業の経営規模や、これまでの業務実績、保有している売掛債権の金額などを把握するために、法人税の決算報告書を提出する必要があります。

商業登記簿謄本

法人が存在している事実を証明するために、商業登記簿謄本が必要となります。ファクタリング業者側からすると、架空の申し込みの防止を兼ねています。

申込代表者の身分証明書

ファクタリング利用における、無関係者の成りすましによるファクタリング申し込みを防止するため、申込代表者の運転免許証やパスポートなど、身分証明書が必要となります。

印鑑証明書

契約の際に使用する印鑑が実印であることを証明するため、法人と申込代表者個人の印鑑証明書を用意しましょう。法人の印鑑証明書は法務局で、申込代表者個人の印鑑証明書は居住地の市町村役場で取得できます。

各種書類を偽造した場合、どんな犯罪が成立するの?

ファクタリングの審査を受けるにあたって、必要書類の用意が必要不可欠であることはもちろんですが、どうしてもファクタリングで資金を調達しないといけない状況にあるからといって、上記の書類を偽造するような真似は絶対にしないでください。

書類を偽造して審査を受けようとすれば、その時点で”犯罪が成立”することになります。

具体的に、どのような行為が、どのような犯罪に該当するのか、法律の立場から詳しく見ていきましょう。

請求書を偽造した場合

請求書の偽造は、ファクタリング業界で頻繁に起こるトラブルの1つです。架空の債権を用意したり、債権に記載されている金額を書き換えたりしてファクタリング業者へ提示すると、どのような犯罪が成立するのでしょうか?

偽造罪は成立しない

偽造した請求書や見積書が自社名義人である場合、偽造罪は成立しません。

偽造罪が成立するケースは、基本的に”他人名義の書類”を勝手に作成した場合です。

請求書や見積書は”自社名義”のものであるため、架空の内容を記入しても偽造罪には当てはまらないのです。

詐欺罪が成立する

しかしながら、架空の債権をでっちあげて請求書や見積書を作成し、それをファクタリング業者へ提出した場合には詐欺罪が成立することになります。

架空の債権によってファクタリング業者をだまし、資金を得ようとしているためです。

詐欺罪の刑罰は10年以下の懲役刑であり、罰金刑はありません。

請書(うけしょ)や契約書を偽造した場合

取引先企業が名義となっている請書や売買契約書などの書類を偽造した場合には、何罪が成立することになるのでしょう?

私文書偽造罪が成立する

私文書偽造罪とは、後述する公文書偽造罪に対して、”民間人が作成する”文書を偽造する犯罪です。

請書や契約書は、取引先企業が記名捺印をしますが、相手方の記名捺印部分を、勝手に作成すると、私文書偽造罪が成立することになります。

そして、そのように偽造した私文書をファクタリング業者に提示して、ファクタリングの申し込みを行うと”偽造私文書行使罪”も成立することになります。

また、私文書偽造罪は、民間の相手方が記入すべき部分を勝手に作成した場合に成立する犯罪ですが、取引相手が記名捺印した請書や契約書の数字、日付を勝手に書き換えた場合は”私文書変造罪”が成立することになります。

これら、私文書偽造罪、変造罪、行使罪の刑罰は3ヵ月以上5年以下の懲役刑となっています。

場合に依っては公文書偽造罪が成立することも

取引相手が国や自治体である契約書を偽造すると、公文書偽造罪が成立する可能性もあります。

自治体や国が作成名義人となっている文書が”公文書”と呼ばれるのですが、一般的に、私文書よりも信用性の高い重要書類であると見なされています。そのような文書を偽造すると、私文書偽造罪よりも責任の重い公文書偽造罪が成立することになります。

公文書の場合にも私文書と同様に、偽造罪、変造罪、行使罪とがあります。これらに対する刑罰は私文書の場合よりも確かに重く科せられており、1年以上10年以下の懲役刑が定められています。

運転免許証を偽造した場合

運転免許証やパスポートは、公安委員会や国といった公的機関が発行する文書に該当します。つまりは、それらの書類を偽造すると、公文書偽造罪が成立することになります。

もちろん、偽造した免許証やパスポートをファクタリング業者に提示すれば、偽造公文書行使罪も成立することになります。

通帳を偽造した場合

預金通帳や、通帳に記された取引履歴等々は、金融機関が発行する私文書に該当します。そのため、銀行預金通帳や、取引先企業との取引履歴を偽造した場合、私文書偽造罪が成立します。

ファクタリング業者を騙す行為である以上”詐欺罪”も成立する

ここまでに紹介した、ファクタリング申込のために必要となる書類を偽造して、ファクタリング業者に提出すると、文書偽造罪や偽造文書行使罪が成立するだけでなく、詐欺罪も成立することになります。

偽造、変造した文書を用いてファクタリングを受けると、それは”ファクタリング業者を騙した”ことになるからです。

ファクタリング業者の立場からすると、当然、真実を知っていたのなら審査に通さず融資をすることもなかったはずです。それにも関わらず、ファクタリング利用企業が虚偽を告げて、ファクタリング業者を錯誤に陥れたために、融資が成立してしまった、という点で詐欺と見なされるのです。

詐欺罪には未遂罪もあるため、偽造した文書をファクタリング業者に提示した時点で、詐欺罪が成立することになります。ファクタリング業者が、途中で偽造を見抜いて審査に落とされても、詐欺未遂罪で処罰が科されることになります。

ファクタリング業者からは損害賠償も請求される

文書の偽造、詐欺等の犯罪行為によって、実際に資金調達を受けると、ここまで紹介したように刑罰を科されることになりますが、実際はそれだけではありません。ファクタリング業者側から、損害賠償請求も為されるのです。

損害賠償請求にあたっては、ファクタリングによって融通した元本の額だけでなく、遅延損害金も加算されるため、融通を受けた金額よりも多額の支払いが生じることになります。

訴訟を起こされると、弁護士費用も加算される可能性も高まり、その場合の弁護士費用は通常、認容される損害賠償額の10%となっています。

刑事的な罰則が適用されて前科がつくだけに留まらず、莫大な損害賠償請求をされた結果、倒産のリスクに直面する可能性もあります。

ファクタリングの申し込みにあたっては不正は絶対に行わないようにしましょう。

まとめ

ファクタリングで必要となる書類を偽造した場合の刑罰や、民事的な罰則に関してご説明してきましたが、不正を働いた後に待っている、事の重大さをご理解いただけたでしょうか?

不正により前科がつくことで、企業の社会的信用度を失ってしまうことはもちろんですが、不正を働いた場合、刑事的な罰則ばかりで済むことは少ないです。

ファクタリング業者から損害賠償請求を申し立てられた場合には、企業の存続が危ぶまれることになります。

どのような場合であっても、企業を存続し続けることは難しくなることは確かなので、不正行為は、絶対に、しないようにしましょう。