企業の資金調達手段として、銀行融資と同じようにメジャーとなりつつある”ファクタリング”。

資金調達手段の文脈で銀行融資と比較しながら語られることも多いですが、ファクタリングを活用する目的は資金調達に留まらず、財務内容の健全化やキャッシュフローの安定といった、企業経営の改善を図ることにもあります。

企業経営の改善を図れるファクタリングですが、一般的には融資の場合と比較して、金利（手数料）の面で割高であるといわれており、ファクタリングをしたものの結局、経営改善を図れなかった、というケースも少なくありません。

そして、そのような事態に陥る前に検討してもらいたいのが、ファクタリング業者の乗り換えです。

ファクタリング業者の手数料をはじめとした諸費用の設定は、実にさまざまであるため、ご自身が利用しているファクタリング業者よりもリーズナブルに活用できる業者も多く存在するはずです。

そこで、今回の記事では、ファクタリングの乗り換えに関して、乗り換えをするメリットや乗り換えによるコストカット効果など、詳しく解説していきます。

結論：ファクタリングの乗り換えは可能

まず大前提として、ファクタリングは、例え既にどこかの業者と契約をしている場合であっても、他のファクタリング業者に自由に乗り換えることができます。

一般的に、どのファクタリング業者も他社への乗り換えNGなど、他社との契約を制限する規定を設けていません。

ですので、ファクタリング業者を乗り換えてみて、合わないと感じた場合には、元のファクタリング業者と契約を結び直すことだって可能なのです。

また、ファクタリング契約を結ぶ際の売掛債権に関して注意が必要ではあるものの、ファクタリング業者の併用も可能です。試しに新たなファクタリング業者と契約してみる、ということも問題ありません。

メリットやデメリットに関しては後述しますが、ファクタリングの乗り換えは、自社経営のキャッシュフローの見直しなどの効果を発揮するものであるため、ファクタリング利用者が最新の注意を払えば、多くのメリットを享受することができるのです。

乗り換えできた際の資金調達のコスト削減効果は非常に大きいものです。気になっている方は、後述する内容も踏まえて、前向きに考えてみてはいかかでしょうか？

ファクタリング業者を乗り換えるメリット

ここからは、ファクタリング業者を乗り換えるメリットについてご説明していきます。経営改善に機能する多くの効果が期待できますので、乗り換えを検討する際の参考資料にしてください。

手数料を抑えられる

ファクタリング業者を乗り換えるにあたって、現在利用中のファクタリング業者を含め、複数のファクタリング業者の手数料を比較することになります。

業者の比較検討や、乗り換えのための手続きと必要書類の準備など、手間も多いですが、手数料を抑えられることで得られる長期的なメリットは非常に大きいです。

特に、ファクタリング手数料は、ファクタリングで譲渡する売掛債権の額に対する割合で設定されることが多いため、利用額が大きいほど、手数料を削減することの効果は大きくなります。

ファクタリングは一定の手数料を業者へ支払うことで、売掛債権に記載された回収日よりも早期のタイミングで現金を受け取れるようにしたサービスであり、これによって資金難を乗り越えられるわけですが、手数料の支払いがある以上、利益の目減りは避けられません。

だからこそ、手数料の安いファクタリング業者を選ぶことが大切にもなるのです。

利用者にとってより好条件でファクタリングを利用できる

ファクタリング業者を乗り換えることで、手数料をはじめとした、その他の条件も改善できることが期待できます。

現在利用中のファクタリング業者よりも、現金化までのスピードが早ければ、今後、スピーディーな資金調達を期待できるようになるでしょう。

小口の売掛債権も扱ってくれているファクタリング業者であれば、個人事業主との取引による売掛債権なども利用できる可能性があります。

審査を通過しやすくなる

過去にファクタリングを利用していることが、実績として認められ、”安全な顧客である”と認めてもらえる可能性が高くなります。

ファクタリング業者にとって懸念事項となるのは、売掛債権の二重譲渡や、2社間ファクタリングで売掛金を返済せずに横領してしまうリスクが付きまとうことです。

過去のファクタリングの利用実績は、ファクタイング業者にとっても安心材料になります。利用の経歴がある場合には、その旨を伝えてみるようにしましょう。

買取限度額が増額される可能性がある

ファクタリング業者によっては、売掛債権の買取限度額を定めている場合があります。特に、小規模なファクタイング業者となると、金額の小さな債権を対象としているケースも多く、買取限度額が1,000万円などのように定められていたりすることもあります。

ファクタリングの乗り換えを機に、大手のファクタリング業者などを利用するようになれば、買取限度額の増額を期待できることはもちろん、複数の売掛債権のまとめ買いなどもしてもらえる可能性が高くなります。

ファクタリング業者乗り換えの有効性

ファクタリング業者を乗り換えるメリットをご紹介しましたが、実際にどれくらいの金銭的な効果があるのかイメージを持ちにくいですよね。

ここでは、具体的な数値を示しながら、ファクタリング業者の乗り換えによる調達コストの削減効果を解説していきます。

乗り換えによる調達コストの削減効果

ファクタリングの初月利用額を700万円、それ以降6ヵ月間、毎月100万円ずつ下げた金額のファクタリングにおけるキャッシュフローを見ていきましょう。

利用中のファクタリング業者の手数料率を売掛債権の12%とし、乗り換え後の業者の手数料率を8%とします。

2ヵ月目からファクタリング業者を乗り換えるとした場合の、調達コストの削減効果は以下の表のようになります。

	買取金額	利用中	乗り換え後
		手数料（手数料率12%）	手数料（手数料率8%）
1ヵ月目	700万円	84万円	84万円
2ヵ月目（乗り換え月）	600万円	72万円	48万円
3ヵ月目	500万円	60万円	40万円
4か月目	400万円	48万円	32万円
5か月目	300万円	36万円	24万円
6ヵ月目	200万円	24万円	16万円
7か月目	100万円	12万円	8万円
手数料合計		336万円	252万円

2ヵ月目から、手数料率を12%から8%のファクタリング業者へ乗り換えることで、手数料の差額は84万円となり、つまりは、それだけの額のコストカットが可能であるということになります。

今回の事例では買取金額を700万円、手数料率を12%、8%としましたが、買取金額が大きいほど、乗り換え前後の手数料率の差が大きいほど、調達コストの削減効果は大きくなりますので、乗り換えの際には、ぜひ実際に計算をしてみてもらえればと思います。

ファクタリング業者乗り換えの注意点

ファクタリング業者を乗り換えることによるメリットが多いことはもちろん、乗り換えによる具体的なコストカット効果の大きさも実感してもらったかと思いますが、その一方で乗り換えの際に注意しなければいけないこともあります。

債権の二重譲渡をしてしまわないように

ファクタリング業者を乗り換える場合に、絶対に行ってはならないのが”売掛債権の二重譲渡”です。

二重譲渡とは、既に売却の済んだ（売却先が決定している）売掛債権を、売却先以外のファクタリング業者にも売却する行為のことを意味しています。

売掛債権の二重譲渡は違法行為です。この行為が意図したものであり、悪意を持ってファクタリング業者から余分に資金の調達を図った場合には、詐欺罪が成立することになります。

詐欺罪は未遂に対しても、詐欺未遂罪として適用されるようになっているため、例え、二重譲渡による資金調達が為されなくても、二重譲渡であることを認知したうえでファクタリング申込を行えば、その時点でアウトです。

詐欺罪の刑罰は10年以下の懲役刑となっています。前科を持つようになると、企業として社会的な信用性を失い、他の取引企業との関係悪化にもつながることは間違いありません。絶対に不正は行わないようにしましょう。

また、上記のように悪意が無くとも、売掛債権の管理が杜撰だったために、意図せず二重譲渡をしてしまうケースも見られます。

ファクタリング取引の記録は、適切に保管しておくように心掛けましょう。

信頼できる業者への乗り換えこそ重要

ファクタリング業者を乗り換えるに限らず、ファクタリングを利用する際には、利用予定の業者が信頼できるか否かを慎重に吟味するようにしましょう。

手数料等の諸費用に関して、申込前の相談のタイミングから、はっきりと提示してくれたり、財務コンサルタントとして、ファクタリングの使い方についてアドバイスをくれたりするファクタリング業者は、信頼のおける業者であるといえるでしょう。

業者の中には、広告の内容と手数料率が異なる、説明されていない手数料を請求する業者もいます。さらに悪質な場合、ファクタリング業者を装って、貸金まがいの資金提供を行い、執拗な取り立てをする闇金業者もいます。

業者選びは慎重に行うようにしましょう。

まとめ

ファクタリングの乗り換えに関して、乗り換えのメリット、乗り換えによる実際のコストカット効果、乗り換えの際の注意点を解説してきましたが、いかがだったでしょうか？

ファクタリング業者の乗り換えは、メリットが非常に多く、自社にとって適切なファクタリング業者へ乗り換えることが出来れば、効果を最大限に発揮できるものになります。

そして、その効果を最大限にするためにも、乗り換えの際の注意点には十分に気を付けるようにしましょう。自社の信頼を損ねる、経営を悪化させてしまう可能性もあるので、慎重なファクタリング業者選びを行ってもらえればと思います。

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