2022-10-07
ファクタリングで分割払いはできる?支払えないケースや対策法も解説

ファクタリングは、事業者が持つ売掛金を売却し、すぐに現金化する資金調達方法です。
例えば2社間ファクタリングの場合、買取申込を行ってファクタリング会社に振込を依頼して、売掛金が入金されたタイミングでファクタリング会社に弁済を行います。
資金繰りが悪化している企業の場合、この際の弁済を分割払いできるのか気になるでしょう。
この記事では、ファクタリングで分割払いができるのかを解説し、支払えないケースやその場合の対処法もわかりやすくご紹介します。
ファクタリングは分割払いができない
結論から申し上げますと、ファクタリングは分割払いができません。
分割払いが不可能な理由は、ファクタリングの仕組みを知ると理解しやすいため、まずは2社間ファクタリングの流れを見てみましょう。

- 売掛金をファクタリング会社に売却する
- ファクタリング会社が手数料を差し引いた金額を利用者に支払う
- 利用者が売掛先から売掛金を受け取る
- 受け取った売掛金を振り込んでファクタリング会社に一括弁済する
利用者がファクタリング会社から受け取った現金は、売掛金の「前払い分」に過ぎません。利用者は、本来の支払い期限までに売掛先から売掛金を受け取り、ファクタリング会社に弁済する義務を負います。この際の弁済方法は、原則として一括払いのみです。
仮に分割払いを認めると、ファクタリング会社が資金を全額回収できる可能性が低くなり、事業リスクが増大します。また、ファクタリングは「債権譲渡」として扱われるため、法的には貸金業法の対象外です。分割払いを認めると、出資法などに抵触するおそれがあるため、ファクタリング会社は分割払いに対応していません。
3社間ファクタリングの場合は関係ない
ファクタリングには、先述した2社間ファクタリングのほかに「3社間ファクタリング」もあります。これは、利用者とファクタリング会社に加えて、売掛先も契約に参加するタイプのファクタリングです。3社間ファクタリングの流れも把握しておきましょう。

- 売掛金の現金化をファクタリング会社に相談する
- 売掛先に通知し、ファクタリングの承諾を得る
- ファクタリング会社が手数料を差し引いた金額を利用者に支払う
- 売掛先がファクタリング会社に売掛金を弁済する
3社間ファクタリングの場合、売掛先からファクタリング会社に売掛金が支払われます。そのため、利用者が弁済する・弁済しないといった概念自体がそもそもありません。
なお、売掛先からファクタリング会社に売掛金を支払う際も、分割払いを選ぶことは不可能です。債権を回収できないリスクや法律に抵触するリスクは2社間ファクタリングと変わらないため、分割払いには応じてもらえません。
分割払いができるのは貸金業の融資のみ
お金を受け取った後に分割払いで返済できるのは、貸金業の融資のみです。例えば、政策金融公庫や銀行などが行う融資、消費者金融による融資のほか、クレジットカードのキャッシングなども融資にあたります。この場合、貸金業者が認めた範囲内で分割払いを選択できます。
なお、一部のファクタリング会社は、「償還請求権あり」のファクタリングを提供する場合があります。これは、売掛先が売掛金を支払わなかった場合に、利用者が不足額を補填する仕組みです。しかし、仮に貸金業登録している会社だとしても、ファクタリングの契約で分割払いを選ぶことはできません。
ファクタリング会社に支払いできなくなるケースとは?

2社間ファクタリングでは、利用者がファクタリング会社に支払いができなくなるケースもよく見られます。この項目でご紹介する2つのケースには特に注意が必要です。
売掛金を使ってしまった場合
支払いができなくなるケースとして特に多いのが、回収した売掛金を別の支払いで使ってしまったというケースです。事業資金が不足して自転車操業のような状態に陥ると、つい手元資金として使ってしまい、ファクタリング会社への弁済が滞りやすくなります。
ファクタリング会社への弁済が遅れると「契約違反」とみなされる可能性が高いです。最悪の場合は、損害賠償請求や訴訟に発展するおそれもあるため、注意しなければなりません。また、遅延損害金が加算されたり、信用情報に悪影響が及んだりする場合があることも注意点です。
売掛先が支払いを延滞している場合
売掛先の資金繰りが悪化したり、倒産したりして、支払いが遅れるケースもあります。
この場合は、まずファクタリング会社に提出した譲渡通知書や債権譲渡登記を確認し、支払日などを見誤っていないか確認しましょう。問題がなければ、売掛先に連絡し、支払い状況を確認します。延滞の理由が資金不足なら、分割払いを提案するのも一つの手です。
売掛先の状況がわかったら、ファクタリング会社にも近況を報告してください。償還請求権なしの契約を結んでいる場合は、ファクタリング会社が売掛先へ直接請求しますが、償還請求権ありの場合は利用者の責任で売掛金を回収しなければなりません。
ファクタリング会社に支払ができない場合はどうする?

資金不足に陥り、ファクタリング会社に支払いができない場合、そのままの状態で放置してはいけません。先述したように契約違反を指摘され、損害賠償請求に発展する可能性もあります。この場合の正しい対処方法について、4つのポイントから解説します。
ファクタリング会社に説明する
まずはファクタリング会社に連絡して、現況を隠さず正直に伝えましょう。「資金を別の用途で使ってしまった」「売掛先の延滞により回収が遅れている」など、事実を丁寧に伝えることが大切です。
嘘の情報を伝えたり、弁済ができない理由を濁したりすると、詐欺を疑われるリスクがあり、双方の関係性が悪化します。契約内容やファクタリング会社の方針にもよりますが、誠意を持って現況を伝えると、弁済までの期日が猶予される可能性もあるでしょう。
専門家に相談する
専門家に相談して、弁済する方法がないか意見を聞くことも有効な手段です。弁護士や司法書士、税理士など、弁済ができない理由に合った専門家に相談してください。
例えば、多重債務で苦しんでいる場合は、弁護士に相談すると債務整理を依頼できる場合があります。売掛先との間でトラブルが生じている場合は、弁護士には交渉代行の依頼が、司法書士には訴訟手続きなどの依頼が可能です。
専門家に相談するお金がない場合は、法テラスや日本司法書士会連合会などの無料相談窓口を利用しましょう。できるだけ早いタイミングで相談すると、解決率を高められます。
別の方法で資金調達をする
別の方法で資金調達を行い、ファクタリング会社に弁済する方法も有効です。例えば、ビジネスローンや公的融資を利用すると、必要な資金をすぐに確保できる可能性があります。また、分割払いに対応している場合が多く、無理のないペースで返済できることもメリットです。
ただし、利用する機関によっては金利を高く設定している場合があります。なお、審査には1~2週間前後がかかる可能性があるため、時間に余裕を持って申し込みをすることがポイントです。
踏み倒しはしない
絶対に避けなければならないのが「踏み倒し」です。ファクタリング会社に連絡せず放置したり、ファクタリング会社からの電話に出なかったりすると、最悪の場合は詐欺を疑われて被害届が出されることもあります。
また、売掛先に連絡される場合があることも注意点です。ファクタリングを利用して踏み倒そうとしていることが売掛先に伝わると、売掛先の信頼を失いかねません。その後の事業にも悪影響が生じるため、踏み倒しは絶対にせず、まずはファクタリング会社や専門家に相談してください。
分割払いを提案してくるファクタリング会社は悪徳業者の可能性あり

ここまでにお伝えしたとおり、ファクタリングでは分割払いを選択できません。しかし、なかには分割払いを提案するファクタリング会社もあります。資金繰りに苦しんでいるときに分割払いを提案されると、つい応じてしまいがちですが、そのような提案をするファクタリング会社は悪徳業者の可能性が高いです。
悪徳業者は、ファクタリングサービスであると謳っているものの、その実態は単なる貸金業者に過ぎません。法外な手数料を徴収したり、違約金を設定したり、担保を要求されたりする場合は特に注意すべきです。知らぬ間に、いわゆる「闇金業者」に手を出してしまうおそれがあります。
信頼できるファクタリング会社か、それとも悪徳業者かを見分けたい場合は、日本ファクタリング協会に加盟しているか確認しましょう。金融庁に登録されている業者も、法律に則って営業しているため、少なくとも闇金ではありません。また、可能であれば口コミも確認し、過去にトラブルを起こしていないか調べましょう。
まとめ
ファクタリングの弁済には分割払いができません。2社間ファクタリングの場合、売掛先から売掛金を回収した後は、ファクタリング会社に一括で弁済する必要があります。分割払いを提案するファクタリング会社は、悪徳業者である可能性が高いため、利用を避けましょう。
なんらかの事情で弁済ができなくなった場合は、ファクタリング会社に現況を正直に伝えてください。弁護士や司法書士に相談したり、別の方法で資金調達をしたりといった方法が、この場合の対処法として有効です。詐欺で訴えられるリスクもあるため、踏み倒しは絶対に避けて、困ったら一人で悩まずにファクタリング会社や専門家に相談しましょう。
