2023-07-31
棚卸資産回転期間とは?商品・在庫の販売効率を測る指標をわかりやすく解説
棚卸資産回転期間とは、わかりやすく説明すると商品・在庫を仕入てから販売するまでにかかる時間を示した指標です。
通常、卸売業などでは商品・在庫を仕入れ、それを販売することで利益を得ます。しかし、当然ながら商品・在庫によって売れるスピードは変わります。
その売れるまでの期間を示したのが、棚卸資産回転期間です。
今回はそんな棚卸資産回転期間について、わかりやすく解説します。商品・在庫の販売効率を測る指標として使用される棚卸資産回転期間の特徴に触れながら説明するので、ぜひ参考にしてみてください。
棚卸資産回転期間とは
棚卸資産回転期間とは、商品や在庫を仕入れてから販売するまでにどれくらいの時間がかかったかを示す指標です。わかりやすくまとめると、商品・在庫の販売に注目した「効率性の指標」となります。
棚卸資産回転期間が長い商品・在庫は、売れ残っている状況を示します。しかし、逆に棚卸資産回転期間が短い商品・在庫は、すぐに売り切れる状況を示すのです。
棚卸資産・売上原価・日数から算出
棚卸資産回転期間は、適切な計算式を使えば簡単に割り出せます。
- 棚卸資産回転期間=棚卸資産÷(売上原価÷365)
この計算式を用いれば、棚卸資産回転期間も簡単に計算可能です。
一見すると難しいように見えますが、要は売上原価を365日で割り、さらに棚卸資産を割ることで算出できます。重要なのは、仕入れてから何日で売れるのかという点であり、その点が計算できれば棚卸資産回転期間はすぐに調べられます。
ただし、棚卸資産回転期間は会社や企業によって異なるだけでなく、商品や在庫によってもそれぞれ変わります。例えば、性質の似ている商品や在庫であっても、Aは早く売れるのにBが売れるのは遅いということもあるでしょう。
棚卸資産回転期間は、そういった商品・在庫の流れを把握するためのものでもあるのです。
棚卸資産が意味するもの
では、棚卸資産回転期間の「棚卸資産」とはそもそも何を意味するのでしょうか。
棚卸資産とは、そのまま商品・在庫を意味します。その回転期間を意味するのが、棚卸資産回転期間となります。要は、ある商品・在庫を仕入れてから売れるまでの回転率を示した指標が棚卸資産回転期間なのです。
会社や企業の目線から棚卸資産を見ると、貸借対照表や損益計算書においては「流動資産」に含まれます。つまり、棚卸資産は「流れる資産」を意味するわけです。
組織として所有する資産には「流動性のある(動く)資産」と「流動性のない(動かない)資産」があります。棚卸資産はその「動く資産」に該当します。これを覚えておくだけで、棚卸資産回転期間もより理解しやすくなるのではないでしょうか。
棚卸資産回転率との違い
棚卸資産回転期間とよく似た言葉に、棚卸資産回転率というものがあります。しかし、これらはどちらも同じ意味を持つ言葉です。そのため、表現として違うだけで、どちらも表すものは同じと覚えておきましょう。
ただし、棚卸資産回転期間は一定の期間を表すのに対し、棚卸資産回転率は回転率を表します。この点は表すものが微妙に異なるので、その点は注意しましょう。
売上原価・棚卸資産から算出
棚卸資産回転率は以下の計算式で算出できます。
- 棚卸資産回転率=(売上原価÷棚卸資産)
以上の計算式は、棚卸資産回転期間のものとは微妙に違います。回転率の方を計算したいということなら、こちらの計算式を使用するようにしましょう。ただし、この計算式も売上原価を棚卸資産で割るだけなので、難しいことは何もありません。
この棚卸資産回転率も、商品・在庫によって異なります。特に棚卸資産回転率は商品・在庫の魅力だけでなく、世間のニーズによって左右されます。そのため、必ずしも棚卸資産回転率だけで、商品・在庫が売れるかどうかを判断することはできません。
できれば、他の指標も使用して商品・在庫の流れを知っておきたいです。その方法については、後の項目「棚卸資産回転期間と併せて見たい指標」にて解説します。
棚卸資産回転期間との使い分け
棚卸資産回転率と棚卸資産回転期間は、どのように使い分ければ良いのでしょうか。これに関しては、どちらの指標も表すものはおおよそ同じなので、分析の方法によって用い方を工夫するのがおすすめです。
例えば、日数で表現した方がわかりやすいということなら、棚卸資産回転期間を使用する方が良いです。逆に、総資産回転率など、他の効率性指標と併せて確認する場合は棚卸資産回転率を使用した方が良いでしょう。
このように、どちらの指標を用いるかによってわかりやすさが変わってきます。可能であれば、組織の特性に合っている方を使用してください。
棚卸資産回転期間の目安
ここからは、棚卸資産回転期間の目安について解説します。前述の通り、棚卸資産回転期間は、損益計算書の売上原価が貸借対照表の棚卸資産の何倍存在するかを計測し、その効率性を測るための指標です。
仮に、売上原価が1,200万円で棚卸資産が100万円だった場合、売上原価の金額は棚卸資産の金額の12倍に相当します。要は、1年間に発生する売上原価1,200万円に対して、100万円(約1ヶ月分)を棚卸資産で保有していることを指します。
これを棚卸資産回転期間で表現すると、おおよそ「30日」という計算となります。つまり、商品・在庫を仕入れてから30日で売れることを意味するわけです。
実際にはもっと複雑な計算が必要となりますが、棚卸資産回転期間の目安はここで解説した方法を念頭においておくとわかりやすいです。重ねての説明になりますが、棚卸資産回転期間は「商品・在庫がどれくらいの期間で売れるかを示した指標」となります。
長いより短いのが理想
棚卸資産回転期間は、長いより短いのが理想です。
例えば、人気商品Aを仕入れた場合、棚卸資産回転期間は短くなることがほとんどです。日用品Bを仕入れた場合も同様です。しかし、無名のメーカーが新商品として販売したものを在庫として仕入れた場合、棚卸資産回転期間は長くなることが往々にしてあります。
棚卸資産回転期間が長くなるということは、つまり売れるまでに時間がかかることを意味します。それでも利益が確保できるなら問題はありませんが、回転率が悪いと組織の継続もままなりません。ゆえに、棚卸資産回転期間は短いのが理想なのです。
会社や企業の資金は無限ではありません。商品・在庫が売れ残れば、それが間接的に負債となることもあるでしょう。それを避けるには、ひたすら商品・在庫を仕入れてはすべて捌かなくてはなりません。
売れ残りが発生すると、その商品・在庫の管理にさらなるコストがかかります。結果、他の商品・在庫に投資できたはずの資金も失うことになります。つまり、会社や企業としては、常に流動資産が流れている状態で、仕入れと売上のバランスが取れているのが理想なのです。
業種によって変わる平均値
ここまで棚卸資産回転期間について説明してきたわけですが、実は棚卸資産回転期間は業種によって平均値が変わります。以下、その業界別の主な平均値です。
建設業 | 47.8日 |
製造業 | 52.8日 |
情報通信業 | 62.6日 |
運輸業・郵便業 | 3.0日 |
卸売業 | 26.1日 |
小売業 | 37.5日 |
不動産業・物品賃貸業 | 168.5日 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 16.9日 |
宿泊業・飲食サービス業 | 15.3日 |
娯楽業・生活関連サービス業 | 12.5日 |
その他のサービス業 | 9.0日 |
以上が主な業界別の棚卸資産回転期間の平均値となります。こうやって見てみると、業界によって棚卸資産回転期間は大きく違うことがわかります。
特に運輸業・郵便業のようにスピードが求められる業界においては、平均して3.0日となるのが特徴です。対して、不動産業・物品賃貸業のような業界においては、平均して168.5日となるのが特徴です。
棚卸資産回転期間と併せて見たい指標
最後に、棚卸資産回転期間と併せて見たい指標を解説します。
- 仕入債務回転期間
- 売上債権回転期間
仕入債務回転期間とは、商品を仕入れてから現金を支払うまでの期間を指す指標です。一方、売上債権回転期間とは、商品を売り上げてから現金を支払うまでの期間を指す指標です。
どちらも仕入れと売上の回転期間を示した指標となります。この指標と棚卸資産回転期間を併せて見ることで、商品・在庫がどのように流れるかが見えてきます。それだけでなく、現金がいつ入るのかも見えてくるのが特徴です。
会社や企業にとっては、商品・在庫を売るところがゴールではありません。現金もしくは売掛金・受取手形などの資産を得て、初めて1つの営業活動となります。しかし、会社や企業によっては、商品・在庫を販売したのは良いものの、なかなか現金が手に入らないということもあるでしょう。
それこそ、売掛金や受取手形ばかりで販売してしまうと、肝心の現金が手元になく、資金繰りに困窮するという事態にもなりかねません。その点は注意が必要となります。
まとめ
棚卸資産回転期間は、商品や在庫を仕入れ、それを売るまでの日数を示したものです。棚卸資産回転率は、その回転率を示したものを表し、どちらもおおよそ同じ意味を持ちます。
棚卸資産回転期間は、会社や企業の経営をしていく中で絶対に見逃せない指標です。併せて、仕入債務回転期間や売上債権回転期間も見ておきましょう。そうすることで、現金などの資産がいつ入ってくるのかも明確になります。
しかし、時には売掛金や受取手形などの売上債権が蓄積し、肝心の現金が手元にない場合もあるでしょう。そんな時は最短2時間で入金でき、面倒な書類や審査も不要、担保も保証人も必要ないQuQuMo(ククモ)をご活用ください。
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