2024-04-08
ファクタリング詐欺で逮捕されるケース
ファクタリングは、売掛債権などを買い取り、支払期日前に現金化する資金調達方法の一つです。
コロナ禍による売上の低下やエネルギー価格や原材料価格の急激な高騰による資金繰りの悪化などに伴い、ファクタリングへの注目が高まっています。
そのような中で、ファクタリングを装った詐欺事件が増え、逮捕事案も起こっているため注意が必要です。
■ファクタリングによる詐欺逮捕とは
ファクタリングは、支払期日が到来していない売掛債権などをファクタリング業者が買い取り、手数料を控除したうえで支払期日前に現金化してくれる方法です。
資金繰りに困り、自転車操業状態に陥っているケースや経営状態が悪く、銀行融資などが受けられないケースでも、売掛債権などを有していれば資金調達が可能なため、困った時の助け舟としてファクタリングを提供する業者も増え、利用者も増えています。
そうした状況につけこんで、利用者を騙すケースをはじめ、逆にファクタリングの仕組みを利用してファクタリング業者を騙す詐欺事案も増えています。
中には、金銭トラブルとして民事的に解決を図り、刑事事件化されていないケースもありますが、詐欺罪として逮捕されているケースも増えているので注意が必要です。
どのようなケースがファクタリング詐欺にあたるのかを知り、詐欺をするファクタリング業者を騙った悪質な業者の利用を避けるとともに、利用者側も詐欺をしないように気を付けなくてはなりません。
なお、詐欺罪として逮捕され、法定で判決が下った場合、詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役となり、罰金刑などは設けられていません。
また、複数人が共謀するなど詐欺グループにより組織的に詐欺行為が行われた場合は、刑が加重され、法定刑は1年以上の有期懲役となり、長期は20年となります。
ファクタリング詐欺の加害者になって人生を棒に振らないようにしましょう。
■悪質業者に騙されない
正当な方法でファクタリングを提供している業者も多い一方で、ファクタリングを謳って本来行ってはならない法定外の高金利の貸付を行う闇金融業者が横行しています。
ファクタリングと称して行われているものの、経済的に見れば貸付と同様と思われる行為については、貸金業に該当する可能性があります。
貸金業を営むには登録を受けなくてはいけません。
ファクタリングを偽装して実質的な貸付を行っている業者は、登録を受けていない無登録業者、要するに違法業者であるケースがほとんどです。
中には、手数料を法外に設定し、高金利でファクタリングを装った貸付を行う闇金業者もいるので気を付けなくてはなりません。
■闇金融業者に注意
ファクタリングだと騙して、実は闇金で法定外の高額な利息を詐取されるケースがあるので注意しましょう。
たとえば、以下のようなケースが考えられます。
・買取代金が著しく低額なケース
買取を依頼した債権額に比べて、債権の買取代金が著しく低額なケースは、実質的に高金利の偽装ファクタリングの可能性があります。
一般的な相場として、3社間ファクタリングなら手数料率は1~10%、2社間ファクタリングなら10~20%です。
また、利息制限法では20%以上の金利設定を認めていません。
闇金と呼ばれる業者は、貸金業法の上限金利を大幅に違反して金利設定をしているので注意が必要です。
ファクタリングを装う場合には、債権額から控除する手数料率を高く設定し、実質的な高利貸しをしているケースが見られます。
たとえば、100万円の売掛債権を買い取ってもらう場合、正当な2社間ファクタリングで手数料率が高いケースでも、80万円は手取り資金が得られます。
これに対して、60万円しか得られないとなれば、手数料率は40%に昇るので注意が必要です。
なお、貸金業者は利息制限法および出資法の上限金利を守らなくてはならず、出資法の上限金利を超える利息の契約、支払い、受領は刑事罰の対象になります。
また、年109.5%を超える利息の契約をすると、消費貸借契約自体が無効となります。
平気で法律違反をする業者に騙されてはいけません。
ファクタリングだと騙されて、高額な手数料を支払うことで、いっそう資金繰りが悪化し、多重債務に陥る危険性もあるため、手数料が高額なファクタリングには注意しましょう。
・利用者が買い戻しできるとされている
ファクタリングは、債権の保有者がファクタリング業者に債権譲渡を行い、ファクタリング業者が手数料を控除のうえ、譲渡代金を受け取る仕組みです。
大きく分けると2つの方法があります。
1つ目は3社間ファクタリングで、ファクタリング業者、利用者、その売掛先など債権の債務者も含めた3社で契約を締結します。
債権譲渡後、利用者は代金を受け取り、支払期日が来たら、ファクタリング業者は債務者から直接代金の支払いを受ける流れです。
2つ目は2社間ファクタリングで、債務者には知らせず、ファクタリング業者と利用者のみで行います。
債権譲渡後、利用者は代金を受け取りますが、支払期日が来たら利用者が債務者から代金を受け取り、ファクタリング業者に送金するという方法です。
この際、債務者が倒産しているなど、代金の支払いを受けられなかった場合でも、利用者が自腹でファクタリング業者に返金をする必要はありません。
ファクタリング業者は、手数料に債務者のデフォルトリスクも織り込み済みだからです。
利用者が自腹で負担する必要がないことをノンリコースや償還請求権がないと言います。
これに対して、債権の回収が利用者に委託され、一見2社間ファクタリングに見せかけながら、債務者から代金を受け取れなかったら、利用者がファクタリング業者から債権を買い戻すという条件が付されているケースがあります。
これは、ノンリコースとなっておらず、実質的に利用者が自腹で償還しなくてはならない状態になっており、いわゆる貸付と同様の行為です。
利用者が返済義務を負わされているケースは、貸金業にあたり、無登録で行う業者は闇金に該当します。
■ファクタリングを装った貸金業と判断された裁判例
業者もさまざまな方法を編み出しているため、ファクタリングと認められるのか、それとも実質的に貸金業なのか、判断が難しいケースも少なくありません。
実際に裁判で争われた事例では、ファクタリング業者が譲渡対象債権に関する債務者の不払いリスクをほとんど負っておらず、債権の額面額とは無関係に金銭の授受が行われていた事例について、金銭貸付と判断されたケースがあります。
また、債務者が弁済しなかった場合に、ファクタリング利用者が債権額以上の金額をファクタリング業者に支払う旨の公正証書を作成させており、ファクタリング業者が本来負担すべき不払いリスクを逃れていたケースも、金銭貸付と判断されています。
さらに利用者が、取引上の信頼関係が損なわれることを怖れ、売掛先に債権譲渡の事実を知られたくないと考えており、買戻期限までに譲渡債権を買い戻そうとしていることをファクタリング業者が認識していた事例では、実質的に見て、譲渡債権を担保とした金銭消費貸借と認められると判断されました。
その結果、貸金に関する各種規制を潜脱するとされ、公序良俗に反し無効という判決が出た事例もあります。
■給与ファクタリングに騙されない
一般的なファクタリングは、売掛債権など事業者間における債権を支払期日前に買い取るものです。
これに対して、近年増えているのが給与ファクタリングを謳う悪質な業者です。
一般個人が勤務先に対して有する賃金債権を買い取って、高額な手数料を控除のうえ、給料日前に資金を提供します。
そのうえで、給与が支払われたら返済するように迫るものです。
これは、債権譲渡ではなく、貸付になっており、しかも利息制限法の上限金利を超える法外な利息が取られているケースがほとんどです。
また、利用者が債権買取の事実を勤務先に知られるのを怖れて、買い戻しすることを前提に買取を行ったケースも、貸付と変わらないと判断されました。
給与ファクタリングを謳う業者は闇金であることがほとんどで、年率換算すると数百~千数百%になる利息を取られることになるため注意が必要です。
さらに、闇金を利用すると、一般個人、事業者を問わず、恐喝まがいの取り立てに遇うケースもあります。
日常の平穏な生活や業務に支障が出るので、利用しないように気を付けることが大切です。
■利用者によるファクタリング詐欺
ファクタリング詐欺というと、利用者が悪質な業者から騙されるケースがイメージされますが、実は利用者側の詐欺も横行しています。
ファクタリングを希望する利用者に、ファクタリング業者のほうが騙されてしまうケースです。
実際に数百万円~数億円単位での詐欺事件も起きており、逮捕されているケースがあります。
詐欺をすることで氏名が公表され、前科がつくなどして人生を棒に振ってしまうリスクもあるので注意しなくてはなりません。
・二重譲渡による利用者の詐欺
債権者から債務者に対する1本の債権を、ファクタリング業者に債権譲渡した場合、契約書類などを作成したうえで、買取代金を受け取ります。
もっとも、債権は目に見えないため、すでに債権譲渡していることを隠して、二重、三重に債権譲渡することも可能です。
つまり、たった1本の売掛債権を持っているだけで、いくつものファクタリング業者を騙して買取代金を詐取できるのです。
たとえば、100万円の売掛債権を持っていたとしましょう。
Aファクタリング業者に債権譲渡を行い、80万円を受け取ったとします。
さらに、Bファクタリング業者にも債権譲渡を行い、90万円を受け取ります。
さらに、Cファクタリング業者にも債権譲渡を行い、85万円を受け取りました。
100万円の売掛債権で、255万円もの現金を詐取することができてしまいます。
この点、3社間ファクタリングといって、債務者に債権譲渡の承諾を得て、3社間で契約を取る方式なら二重譲渡は防げます。
債権者と債務者がグルでない限りは、債務者がこの間譲渡したと警告を鳴らしてくれる可能性があるためです。
一方、2社間ファクタリングの場合、債権者とファクタリング業者だけで契約を行い、債務者は債権譲渡の事実を知らされないため、二重譲渡が起こりやすいです。
そのため、ファクタリング業者の中には二重譲渡を防止するために、債権譲渡の事実を公にするための債権譲渡登記をすることを求めてくるケースも少なくありません。
ただし、債権譲渡登記は登記所に登記をしている法人しかできません。
個人事業主から2社間ファクタリングをしてしまったケースや債権譲渡登記を求めずに法人から債権譲渡を受けるケースでは、二重譲渡や複数譲渡による詐欺被害に遭う可能性もあるので注意が必要です。
・架空請求書による利用者の詐欺
架空請求書による詐欺とは、売掛債権を有していないのに、売掛債権を架空に作り出して、ファクタリング業者に買取を求めるものです。
契約書や請求書、注文書の偽造を行い、偽造の書類を提出してファクタリングの依頼がなされます。
中には、取引先がグルとなって、取引の実態がないのに架空請求書や契約書を作成して、買取を行わせ、買取代金を山分けしているようなケースもあるので注意しなくてはなりません。
そのため、債権の事実を証明する書類の存在だけでなく、過去の売掛取引の履歴がわかる通帳の調査や実際の取引実態なども調査してからファクタリングを行わないと、詐欺被害に遭うおそれがあります。
即日入金など、スピードを競い合っているファクタリング業者も増えていますが、こうした詐欺に遭わないためには、書類のチェックや審査は慎重にしなくてはなりません。
■まとめ
資金繰りに困っている場合や銀行融資などが受けられない状態でも、売掛債権などの債権を譲渡することで資金調達ができるファクタリングに注目が集まっています。
注目が集まると、ファクタリングを装った悪質な行為を働く業者も増えるので注意が必要です。
買取代金が著しく低額で実質的に高利貸しに該当するケースや買い戻しを前提にしているケース、債務者の不払いリスクを利用者に負担させるケースは、貸付に該当するケースがあります。
貸付をするには貸金業の登録が必要であり、無登録の業者は闇金として法定外の手数料を徴収することや脅迫まがいの取り立てをしてくるので注意が必要です。
一方、利用者側がファクタリング業者を詐欺する逮捕事例も増えています。
二重譲渡や複数譲渡をする詐欺行為や架空請求書など偽造の書類を使ったファクタリング詐欺なども増えているので、ファクタリング業者側も慎重にならなくてはいけません。